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【R-18】Mシチュスレの引用スレ

1 :名無しさん@狐板:2020/01/19(日) 00:15:29 ID:bMTYbG3g



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当スレは某R-18スレの長文レス、SS、スレ主以外のAA・支援AAを投稿する場所です
それ以外での使用はお控えください

1079 :Ume made by machineD:2026/02/08(日) 20:36:56 ID:EilABuET
ウメは床に膝を抱えて座りながら歯噛みしていた。
その視線の先には、自分の椅子に座りながらマサキと親しげに会話する女の姿があった。

―そのイスは、ご主人が自分の為に買ってくれたイスなのに。

あのイレギュラー騒動の後からここ最近は一緒に任務にも行っていない。
書類や通信ばかりしていて、そして時折訪れるミカ・ヒラノという記者…

「じゃあまず、どうしてバトルロイドを所有したのを聞かせてくれるかしら?」

「ああ、一通り調査の終わった遺跡の建造物に隠された箇所があったみたいなんだ。
 そこはエイリアンが既にねぐらにしててな、武器も通信機もダメにして逃げ回る羽目になった。
 生きている設備があって藁にも縋る気持ちでセキュリティシステムを作動したら、バトルロイドが…
 まあ、あのウメが起動した訳だ」

マサキの視線には不機嫌な視線でこちらを見つめるウメの姿があった。

「ああ…昔に聞いたバトルロイドを無断で起動させて登録した民間の調査員ってマサキ君の事だったのね…」

「し、しょうがないだろ、命がかかってたんだしあの時は考えてる余裕もなかった」

そうだ、あの時は自分がご主人を助けたんだぞ、という目でウメは頬を膨らませた。

「そして、一通り調査や性能テストが終わった後、借金と任務を請け負う義務と引き換えに所有を認められたんだ」

「バトルロイドの所有なんて限られたエリート調査官や軍の高官でもないと認められないのに、どうしてかしら」

「一度登録したオーナーを解除するのはセキュリティ上非常に難しいらしいんだ。
 そもそもが地球の技術をはるかに超えた遺物だから、下手に弄るとどんな不具合が起きるかわからないらしいんだ」

マサキの頭をふとよぎったのは、あのU-M83…オーナー登録変更を認められずイレギュラー化したヤミの事だった。

「それから、まあ何だ…研究所や軍にとってウメの評価が低かったんじゃないかってのはある。
 テストの結果、思考や感情の機能ばかりが過剰に発達していて、バトルロイドには適さないって。
 特に命令への遵守性に欠けるとかそんな風に判断されてた。
 非戦闘用のアンドロイドを戦闘用に改造したんじゃないのかとか言われてたっけな…それが原因かな」

そう言えば、ウメがかつてテストを受けた際にこっちの質問に答えてくれなかったとぼやいていた事を思い出したマサキ。
確かに向こうから見れば戦闘に不要なものばかりが多く、バトルロイドには不適格に見えるだろう。
だからこそ使い捨てる感覚で自分の様な素人に預けちゃってもいいと判断されたんだろうな、とマサキは思い起こした。
…ウメがマサキに好意的だった理由のひとつだったのだろうか、その扱いが本人(?)にとっても幸いだったのか…。

「複雑な事情があるみたいねえ…先史文明のテクノロジーの動力とかそういうのとか結構こだわりそうだけど」

「ああそうだ、ウメは電力で動いているんだ。別段珍しくもないエネルギーで活動してるってのも価値が低いって判断されたのかもな」

「電力?そんな旧時代のエネルギーでバトルロイドが?」

「調査したところウメの体内のエネルギー炉は人間の体内に収まるサイズの発電所みたいなものらしくて、
 常に電気を生み出して充電していて、半永久的に活動できるんだってさ。戦闘にもそれを転用してる。
 よほどエネルギーを使いすぎない限り補給の必要も無いらしくて、エネルギー補給なんて殆どした事がない」

ウメは適当に相槌を打つように尻尾状のケーブルを軽く振って見せた。
ここからエレキガンに電力をチャージし、ライトニングキャノンの使用時には接続する。
電力の補充もいざとなればこれによって行うが、マサキが前述したように殆どした事はない。

「えっ…燃料とかそういうのは?半永久的に活動できる?とんでもないテクノロジーじゃない。
 エイリアンのコロニーが急速に駆逐されていったのはマサキ君達がハイペースで活動出来からってこと…?」

「…確かにメンテナンスやエネルギー補給の必要性がなかったのと、借金返済って理由で任務を受けまくってたけど…
 完全に向こうの予想を超える成果を上げてたって事か…」

マサキは思い直す。必死にやってきたあの目まぐるしい日々の活動が、確実に実を結んでいたという事なのか、
そしてあのウメも…大した期待もされてなかったのに予想外の成果を上げて、自分に尽くしてくれたのか。
マサキはふてくされてうずくまりながらそっぽを向くウメの後ろ姿を見て思うのだった。

「…でもな、こんな事簡単に話しちゃっていいのか?記事にできるのか?軍の機密情報だろ多分」

「大丈夫よ、どうせ検閲がかかるんだから」

話し過ぎたと感じたマサキにミカは微笑んだ。彼女、ミカ・ヒラノはこの植民星でも最大のマスメディア、
ジオ・メディアの記者である。行政部とも大きな繋がりがある、半官半民の大企業だ。
そんな企業に勤める事になっていたとはマサキにとって驚きだった。
元は自分と同じく地球の貧民層に過ぎなかった彼女が…。

1080 :Ume made by machineD:2026/02/08(日) 20:38:03 ID:EilABuET
「マサキ君がバトルロイドを使ってそんなすごい事やってたなんて驚いたわ」

「オレもだよ。子供の頃は学校や近所でよく遊んでた君とまた会うなんてさ」

「…あの頃はよかったわね。確かに生活は楽じゃなかったけど、それなりに楽しかった」

二人の中に特別な空気が流れているのをウメは察してさらに不機嫌になった。
自分の知らないご主人の事をこの女は知っている、と嫉妬と敵意にも似た感情が走る。

「―あの時のマサキ君は、本当にひどかったわね。…お母さんが亡くなってから」

「…ああ、あの時は本当に…全てがどうでもいいって思えた。抜け殻になったような気分だった。
 あの時、君が声をかけてくれなかったら、今生きていたかどうかわからない」

「私達もそうだったけど、マサキ君はあの後すぐに地球を離れちゃったのよね」

「もう頼るものがいなくなったし、つらい事ばかり思い出しそうだったからもう宇宙に上がる事を決めたんだ。
 …でも地球を離れても孤独な事に変わりはなかったし、この星に来てからいい事なんて何もなかったよ」

マサキが力なくつぶやくその言葉を耳にしたウメは、悲しそうな顔をした。

「気が付いたら地球に帰りたいって、いつも思うようになった。皮肉だよな。
 もう未練がないと思って離れた地球にあれだけ思い焦がれるなんて。
 いつもそうだ。なくしてから初めて分かるんだ…」

いつもなら絶対に自分から話す事のない悲しい過去を淡々と話すマサキの姿に、ウメは悲しさと寂しさを覚えた。
それ程にミカという旧知の相手に思い入れがあるのかと歯噛みをするような感覚だった。

「―だから、ミカに会えてすごく懐かしかった。まるで遠い昔に置いてきたものを見つけたような気分だったよ」

「私もよ。あのツンツンしてた意地っ張りのマサキ君がねえ…」

「ミカも綺麗になった。不細工とかバカにしてた近所の悪ガキたちは見る目が無かったな!」

「あはは…、色々あったのよ、私にもね」

ウメをそっちのけにして思い出に浸り再会を喜ぶ二人の空間に、ウメの不快感はこの上なく高まっていた。
自然に尻尾状のケーブルがブンブンと左右に振れている。

「お茶、いただくわね。…っ!マサキ君ったら随分粗末なお茶飲んでるのね…」

「あ…す、すまない…!いつもオレが飲んでる安物だった…!」

粉末状の安物の茶なんかじゃない、もっといい茶葉があった、と慌てて棚を探し出すマサキ。

「せっかく有名人になったんだから、少しはいい生活をしてないとバカにされるわよ」

ミカは苦笑した。ウメはその苦笑を見てひどく腹立たしく感じた。

「これから目立つ事になるだろうし…服もいいものを着てないと、色々損するわよ。
 …よかったら、私が一緒に選んであげるけど…一緒に行く?」

「ハハ…正直贅沢できる気分じゃないんだ。今まで暮らしてきた時の貧乏性ってのもあるけど、
 ウメでの借金と、地球に帰りたいって夢があるからちょっとさ」

「ダメよ、皆見てくれで色々と決めつけて見下してくる人達なんていくらでもいるんだから。
 これからは色々と気遣いしないと。今度、一緒に行きましょ。取材も兼ねて、ね」

「そ…そうか?でも、一緒に行ってくれるのはありがたいかな…」

正直気が進まないマサキは言葉を濁しながらぎこちなく茶を淹れ直していた。
そしてミカの前に新しく湯気を立てる茶が注がれた所で、その湯飲みを乱暴に奪う影があった。

「ウ、ウメ!」

ウメはその湯飲みを手に取ると、淹れたての熱い茶を一気に目の前で飲み干した。
目の前で繰り広げられる光景に呆気に取られるミカ。

「…あ、あなた…お茶飲めるの?味、わかるの?アンドロイドなのに」

『…カテキンと、カフェインの成分があるっす。やや強めの渋み成分が』

成分や味覚を感じ取れるだけでおいしいという感覚や感情に直結しない、自分の味覚センサーをウメは苦々しく思った。
人間であれば、美味しいよと言って、マサキとともに一緒に食事やお茶を楽しむ事ができるというのに。

「ウメ!何のつもりだ!?それは、ミカに淹れたお茶だろう!」

『ご主人が淹れてくれたお茶を悪く言うヒトに、そんな事してあげる必要なんてないっす!どうせまたけなすっすよ!』

「そんな事はどうでもいいんだ!オレならいい、どうしてお客さんにそんな失礼な事をしたんだ!
 人に迷惑かけたり不快な思いをさせるなって、いつも教えてるだろ!」

『不快な思いをさせてるのはこのヒトの方っす!ご主人に口出ししたり、自分の思うようにしようとしたり!
 ご主人だってイヤな思いしてて何も言わないのに、何でアタシだけ叱るんすか!?ひいきっす!』

今まで見せた事のない態度で怒り反論してくるウメに面喰いながらも、
マサキはここで引いてはいられないと強く𠮟る態度を変えない。
それはマサキの親心から来るものだが、今のウメには理不尽な贔屓の様にしか感じ取れない。
人間というだけで、昔からの友達という理由で、自分を除け者にしてぞんざいな扱いをできるのかと。

「ウメ!まずはミカに謝れ!」

『…ごめん、なさい、っす…』

「心がこもってない!もう一度だ!」

「ちょっとマサキ君、もうやめない?別に私は気にしてないし…」

「そ、そうか…?でもこれはちゃんと叱らなきゃいけない事で…」

ミカが間に入った事でウメの不満と怒りは爆発した。

『なんなんすか!ご主人!そんな女に甘くするなんていつものご主人じゃないっす!』

「そんな女だって!?いつもじゃないのはお前の方だ!ウメ、しばらくここから離れて反省しろ!」

ウメは𠮟りつけるマサキの顔をにらみながら、無言で後ずさる。
そして瞳に悔し涙を溜めたまま、振り返って乱暴に玄関のドアを開き、外へ出た。
叩き付けられるようなドアの音が響き渡った。

―しばしの無言の静寂が包む。


「…マサキ君、あの子は一体どうしたのよ」

「すまない…いつもはあんなんじゃないんだ…不愉快な思いをさせて、悪かった」

「でも、いいの?バトルロイドを外に放り出しておいて」

「…あいつもバカじゃない。おかしな事はしないさ。冷静になればちゃんとわかるはずなんだ。
 自分が悪かったって、謝りに来れるはずだ。…オレだって、親に叱られた時はそうだった」

マサキは残念な顔をしながら、つぶやいた。
子供の頃、母親に叱られて口喧嘩をして、家を飛び出していった事を思い出す。
あの時、やっぱり自分の方が悪かった、母親に嫌われたくない、そう思ってうつむきながら帰った。
きっとあいつだって自分と同じ様に気付いてくれるはずだ。その時はちゃんと迎えてあげよう。
マサキは自分の思い出と重ね、去っていったウメの方向を見つめていた。


―ウメは無言でうつむいたまま、ズンズンと歩みを進めていった。
ご主人のバカ、と言いそうになる口を抑え、離れていくマサキ宅を振り返る。
マサキは自分を追って来なかった。何度も振り返ったが、やはり追って来なかった。
その事を思い知らされたウメは溜めた悔し涙を瞳からこぼし、行く当てもなく一人歩き出していった。

1081 :Ume made by machineD:2026/02/08(日) 20:39:32 ID:EilABuET
―こちら小夜。あ、ウメちゃん、いきなり通信なんてどうしたの?
イレギュラー事件聞いたよ、よくやったね、すごいじゃない。
…あ、オーナーの登録変更?それが理由だって?
まあ…ひどいよね。気持ちはわからなくないかな。
でもいくらなんでやり過ぎだよ。
私だってマスターが本気で自立したいって言ったら寂しいけどさすがにね…。
本人が本気で望んでないのを無理にってのはちょっと私でもできないな…。



―こちらU-M10。なぜ私に通信を?U-Me…いえ、ウメでしたね。
あのイレギュラーと成り果てたU-M83を鎮圧してくれた事、私からも感謝しています。
…オーナーの登録変更?…たとえどんな理由があろうとも、人間の命令に従わない事は許されません。
オーナーが必要としていないのであれば、それに従うのが私達の義務です。
…たとえ、それが…どんなに不本意でも…。


ウメは通信を終了した。
心の中に渦巻く悩みを、交友のあったバトルロイド達に尋ねずにはいられなかった。
今の悩みが紛れるかと思ったが、やはり渦巻く感情はおさまらなかった。

そしてウメはあてもなく居住区を一人で歩いていた。
初めて許された単独での自由行動。密かに憧れていたはずのそれが、マサキという主人がいないだけでまるで気持ちが違って感じた。
最寄りの食料品店、雑貨屋、飲食店、人通り。いつもなら目を輝かせて眺めていたはずのその町並みが急に色褪せて見えていた。
いつも横に並んで質問したりお喋りしていた存在は、今はいない。

すれ違う、談笑しながら一緒に歩く男女のカップル。はしゃぐ子供と一緒に歩く家族連れ。
そして、ベビーカーでを押しながらこれからの家庭の事、静かに眠る赤ん坊の事を話し合う夫婦。
地球から遠く離れても続く、人間の確かな営みがそこにあった。

―どうして、自分はああなれないのだろう?
結婚できないのだろう?子供を産む事ができないのだろう?
自分が人間ではないから。機械だから。
幸せな人間の家庭を見せつけられる度に、ウメは自分という存在の現実にいたたまれなくなった。
そんな光景を直視できなくなった彼女は、人が通らない裏路地へと足を向けていた。

薄暗く狭い道。無機質な配管の数々、薄汚れた機材、ゴミ箱。彼女の心境をそのまま表現する様な陰鬱な光景が続く。
あてもなくただ時間を浪費するためにウメはたったひとりの自由時間を過ごしていた。

「どうしたのねーちゃん、こんなトコ一人で歩いててさぁ」

いかにも軽薄そうな若い男が二人、ウメの歩く目の前に現れる。

「すっげー巨乳じゃん、それにそのカッコ超エロいんだけど?」

「もしかして俺ら誘ってちゃってたりする?」

見た目から容易に想像できるような、ガラの悪い男達。そんな存在がウメの姿を目の当たりにすれば当然予想通りの言葉を投げかける。
ウメは一瞥すると、無言のまま避けて進もうとする。

「なんだよ無視しちゃってさあ、あそぼーぜ、俺らとさ」

「…ん?こいつ人間じゃなくてアンドロイドじゃね?」

ピクリとその言葉にウメは反応すると、そのまま無言で通り去ろうとした。

「アンドロイドが人間様をシカトしてんじゃねーよ」

「人間じゃないんなら好都合だろ、オッパイ触らせろよ」

ウメを通すまいと前に立ちはだかり、人間でないと知るや下卑た顔で下心を丸出しの発言を臆面と無く言い放つ。

『…どいて欲しいっすよ、オーナーでもないあんた達の言う事を聞く筋合いはないっす』

「機械がエラそうにしてんじゃねーよ、付き合えってんだよ」

男が声を荒げてウメの腕を乱暴に掴む。ウメは怒りのこもった目で男の腕を掴み上げる。
見た目は女であろうと、そもそもが機械であるウメにとってはただの人間の男の力などどうと言う事はない。

「い、いでででで!アンドロイドが人間に危害を加えていいのかよ!イレギュラー認定されるぞ!」

よからぬ事を考えて自分から手を出してきたくせに、抵抗されれば立場を盾に取る悪辣さにウメは心底腹立たしく感じた。
その機械の瞳には怒りの光が灯り、腕を掴む力は緩む事がなかった。

「…っっ、ちょっと待てよ、こいつ…あのイレギュラー事件でのバトルロイドだぞ!鎮圧した方の!」

ただならぬウメの雰囲気に気圧されていたもう一人の男が思い出した様に叫んだ。
ひいっ、と声を上げて目の前の男はウメから手を離し、怯える様に離れた。

「あはは、す、すいませんでした…ただの冗談なんです」

「オーナーさんにはどうか言わないで…お願いします…!」

先程とは打って変わって引きつった顔で媚びた笑いを見せる二人組。その表情には隠しようがない怯えが見えた。
圧倒的な力を持つバトルロイド、そして人間に絶対的に服従しない、殺傷する存在がある事をようやく思い出した。
そのまま二人同じタイミングで背中を見せて走って逃げて行った。
暗い裏路地にウメがただひとり取り残される。

―そいつはオレのバトルロイドだ。おかしなちょっかいはやめてもらおう。

―ナンパなら普通の人間相手にやってくれ。アンドロイド相手なら自由にできると思ってるのか?オレがそいつのオーナーだ、許さないぞ。



―今まで、ああいった連中に劣情の目で見られた事は何度かあったが、その時はマサキが追い払ってくれていた。
そばに人間がいないというだけでこの扱いになるのか、そしてマサキが自分を守ってくれていた、
その事を改めて思い知らされたウメはうつむいたまま路地裏を後にし、あてもなくさまよい歩いた。

1082 :Ume made by machineD:2026/02/08(日) 20:42:59 ID:EilABuET
―マサキが隣にいない人間達の世界に疲れ果てたウメは、ベンチに座りうつむいていた。
足が自然にマサキと訪れた思い出のある居住区の公園である。
あの時と違い花も葉も散った裸の木々、そしてマサキもいない。
まるで変わってしまった風景にウメは虚ろな気持ちでいた。


「どーしたのウメねーちゃん、ひとりでうつむいてて」

「マサキさんはどうしたの?」

子供の声に反応して顔を上げると、そこには公園で遊んでいた子供達がひとりでいるウメを気にしてやって来たのだ。

『あ…みんな…』

「ヒマならいつもみたいに遊んでよー」

「ほらさ、ファイナルクエストもうすぐクリアできそうなんだよー、一緒に見る?」

男の子の一人が手にした携帯ゲームの画面を見せびらかしながらウメヘとつぶやいた。
派手なBGMとセリフとともに流れるゲーム画面を見つめるウメ。

『ぐはははは!!勇者よ、この大魔王ザータンには向かうとは愚かな奴らだ!!』

ウメの口からドスの効いたそっくりな声でヴィランのセリフが放たれ、手を振り上げた大げさなアクションを見せる。

「す、すげー!ザータンの声そっくりだ!」

『我が生贄となるがいい!!エビルビーム!!』

「うわーっ、逃げろー!!」

大笑いしながら逃げる子供達、それを声を模倣して手を上げながら追いかけるウメ。
そんな追いかけっこを続けながら子供達とヒーローごっこに興じるウメもまた、いつの間にか笑っていた。



「ウメねーちゃん、また明日ねー!」

『あはは、楽しかったっすよ』

「マサキさんとも仲良くね!」

『う…うん!そうっすね!今度はご主人といっしょに来るっす!』

複雑な気持ちだったが、思わずその言葉に力強く答える事がウメにはできた。
日が暮れて親の待つ家へと帰っていく子供達の後ろ姿を手を振りながら眺めていた。

―やっぱり、子供はいい。
さっきの男達みたいなやつらは嫌だが、明るくて何も考えずに楽しく笑い合える子供達がウメは好きだった。

そんな子供を自分はマサキと一緒にもうける事ができない。
その事にウメは思い悩んでいた。だが、子供は大好きだ。

―そうだ。ご主人の子供なら誰との相手だろうと愛せる。
その子供と一緒に過ごして、育み、見守りながら笑い合って暮らす。成長を見守る。
それができれば十分ではないか。それこそが自分の成すべき事ではないか。
別にいいじゃないか。ご主人の傍にいられる事こそが自分にとって最高の喜びなのだから。

…複雑な気持ちはあるが、ご主人との間に子供を産んでくれるかもしれない存在なのだから、
あのミカという女と仲良くやっていかなくてはいけない。どう接したらいいだろうか。
M10のオーナーが妻帯者だと聞いたし、彼女から色々アドバイスしてもらおうか?
そうウメは悩みながらも、その歩みと心は前向きだった。

そして、子供達と同様に、ウメもまた帰るべき家に、マサキの家に帰ってきた。

二人の男女の声が聞こえる。まだミカは家にいるのだろう。
何と言って帰ろうか、どう話しかければいいだろうか。
頭の中で模索しながら玄関へと近づく。



「―ねえ、マサキ君…あの子を手放す気…ないかしら?」



聴覚センサーに届いたミカのその声に、ウメの体は凍り付いたように硬直した。

「な、何を言うんだ!?あいつを…ウメを…手放すだって!?そんな事を…」

マサキの困惑した声が続け様に響く。

「最後まで聞いて、マサキ君。…貴方はあの子を連れていたら…地球に帰れない」

「…っ!?」


―自分がいたら、ご主人の夢は叶わない?


信じられないその言葉に硬直したウメはそのまま糸の切れた人形のようにがっくりと地に膝をついた。

既に日は落ち、夕暮れが終わり夜の闇が包もうとしていた。

1083 :Ume made by machineD:2026/02/08(日) 20:46:47 ID:EilABuET
「ど…どういう事なんだ!?ウメがいたらオレは地球に帰れないって!
 借金ならこのまま頑張ればいずれ返済できる!あいつと一緒に任務をこなしていれば!」

「マサキ君、あなたはこの星の開拓がどれくらい進んでいるか知ってるかしら?
 この星では各地に支配種とも言うべき危険な原住生物、ヒューマノイドジオアント…エイリアンが跋扈している。
 そいつらを駆逐して開拓を進めるには遺跡から発掘されたバトルロイドの力がまだまだ必要なのよ」

「…確かにそうだ…」

自分がウメと出会ってからいくつものエイリアンのコロニーを壊滅させて、安全地帯を確保し開拓地を広げてきた。
エイリアンの駆除に既存の技術力とコストで軍隊を出動させていたら、これだけのペースで開拓は進んでいなかっただろう。
そんなバトルロイドを手放し、無用な地である地球で遊ばせておく理由などないだろう。行政府が許す訳がない。

「…それにもうひとつ。マサキ君は、地球と植民星との関係が良くない事は知ってるかしら?」

「人並には知ってるよ。植民星の開拓が進んでようやく自立が可能になってきたから、
 今までの開発の支援を借款として徴収しようとしてるって。
 向こうからしたら自立できるまで金出してやってたつもりなんだろうが、
 この星の殆どの移民にとってはあっちの、地球の都合で追いやられたようなもんだ。
 安全な地球に居座り続けておいて、重税を取り立てようなんて皆納得してない。ふざけるなって感じだ」

「…そうよね。私だってそう思ってるわ。この星での各地を取材して望まずやって来て、厳しい環境で頑張り続けた人達をよく知ってる。
 この植民惑星ジオに住んでる移民、そして行政の人間達もほぼすべての人達が同じように考えてる」

ミカは遠い目をしながらつぶやく。彼女もまた、この星で苦労をしながら生きてきた人間の一人なのだろう。

「遺物、その中でもバトルロイドは対立が深まってる地球に対して、植民星が持つ明確なアドバンテージだわ。
 そんなテクノロジーが地球の手に渡る危険性を行政府は許さない」

「………」

マサキは思い出していた。イレギュラー事件が終わってからの軍や行政府からの自分、そしてウメに対する対応の変化を。
恐らく彼らにとってウメは大した評価ではなかったのだろう。だからこそ素人同然の自分に預け使い捨てても構わないような適当な扱いをしていた。
だがあの事件で評価が一変したのだ。バトルロイドの中でも有数の戦闘力と有用性を持った存在であると。
管理を厳重にすべし、安易にその情報を漏らすような、他所に無断で持ち出す事を禁じる、として監視の目が厳しくなった。
…となれば、なおさらこの星から手放す訳にはいかない存在だ。
自分はどうでもいいだろうが、ウメは絶対に…。

マサキは今になって理解した。自分の地球に帰りたいという目的と、ウメを所有し続ける事は両立しえない事である事を。
どちらかを捨てなければならない。地球への帰還とウメ。その両者が天秤にかけられている現実が目の前に立ちはだかった。

「―わかったでしょ、あの子と一緒にいたら…あなたは地球には帰れないのよ。
 ただし、軍や研究所の中であの子の評価は最高に高くなっている。
 だから、オーナーを解除して所有権を譲渡すれば…借金を帳消しにして地球で住む分の対価もきっと手に入る」

「そ、そんな…!オレにあいつを…ウメを売れっていうのか!?」

マサキは声を荒げてミカへと詰め寄った。その勢いにミカは一瞬うろたえたが、直後にマサキの瞳を見やる。

「マサキ君、貴方は何のために今まで危険な調査員として頑張ってきたの?
 地球に帰りたいからやってきたんでしょ?何年間もつらい日々に耐えて叶えたかった夢を、諦められるの?
 出会ってまだ1年も経ってないようなバトルロイドの為に。あの子は人間じゃないわ、機械なのよ」

ミカの言葉の一つ一つがマサキの胸へと突き刺さった。

「ウメは…ただの機械じゃない…あんな笑ったり泣いたり、怒ったりする様な奴を…そんな風には思えない…」

「それもプログラムでしょ…!生き物ですらないのよ!
 出会ってすぐにオーナーに絶対の忠誠を誓う、全てを肯定して好感度が最高になっている、
 まるで漫画やゲームの様な都合のいい存在、そんなお人形にベタベタされて、貴方はそれで満足なの!?」

ミカの目には怒りと嫌悪感が灯っていた。その態度に困惑しながらも、マサキは返す言葉がなかった。
普通の人間からすればどこまでいってもアンドロイドは機械でしかないのだ。
そしてもし自分が逆の立場だったら…もしミカに美形で最高の男性型アンドロイドがいたら男として何も思う所はないか、
そう思えば理解はできなくもなかった。何も口を開かない自分に呆れたのか、ミカは残念そうな目をして振り向いた。

「…マサキ君、私も…貴方と再会して本当に懐かしいと思えたわ。一緒にあの地球に戻れたら…って思ってた。
 ―私、帰るわ。現実を見て、よく考えてみてちょうだい」

待って、とマサキが言うよりも先に、玄関のドアを開けてミカは去っていった。
振り返る事のない後ろ姿にマサキはただ茫然とした。
失った地球での思い出が姿を消してしまう。そんな喪失感に囚われた。

バタン、と静かに閉まるドアの音と、遠ざかっていく靴の音を、静かになった室内でマサキは耳にしていた。

1084 :Ume made by machineD:2026/02/08(日) 20:50:33 ID:EilABuET
―どうしたらいいんだ?
自分は地球に帰りたい。その一心でここまで命をかけて、孤独にも耐えてやってきた。
母親を失って、地球を離れて、それから何もいい思い出なんてなかった。
自分の幸せだった思い出の中にいたミカと偶然出会って、ようやく幸せを取り戻せると思った。
もし、彼女と一緒に再び地球で暮らせるなら…やっと自分は幸せになれると思った。

―その代償はウメを手放す事。それを条件として、果たす事ができる。

手放すと言えばまだ聞こえはいいが、結局の所は売り飛ばすのと同義だ。
かつて自分が目の当たりにしたU-M83、ヤミと彼のオーナーであるヒロ・サイモンを思い出した。
オーナーの権限を譲渡し、自分のバトルロイドを金で売って、引退して悠々自適の生活を送ろうとした。
あれだけ尽くしてきくれたバトルロイドから人間の女に乗り換えるような事を恥もせずに吹聴して。

U-M83、ヤミはそれを認められず暴走してイレギュラーになって、
最後には鎮圧されてオーナーから拒絶される絶望を味わいながら機能を停止した。
あの時の表情は未だに目に焼き付いて離れない。できる事ならせめて元オーナーと言葉を交わさせてやりたかった。

―自分は、あのヤミと同じ様な仕打ちを、ウメにさせようというのか?

マサキは煩悶した。
ゆっくりとイスへと腰を下ろし、机に置かれている写真を眺める。
自分の幼少期の、母親と一緒に写った地球での写真。つらい時はいつもこの写真を眺めていた事を思い出す。
帰りたい、あの頃に戻りたい、そんな一心で孤独に耐えていた。

周囲を見渡すと辺りは静まり返り、ただマサキ一人だけがこの部屋にいる。
昔ならごく当たり前だったこの光景が、ひどく昔の事に思えた。

―この家がこんなに広く感じるなんて思わなかった。ウメが来てからはあんなに狭苦しく感じてたのに。
いつも騒がしくて寂しいなんて考えている暇はなかった。写真を眺めていたら、ウメが飛んできて絡んできた。

「…そうか、あいつにはオレが寂しく見えていたんだな」

ご主人!ご主人!と笑ったり怒ったり、泣いたりしていたウメの顔が頭の中を駆け巡った。
机の隅に、テープで修理したヒビだらけの写真立てがある。壊れたのを捨てるんだったら欲しいってウメが言ってきて、
やめろって言ったのにゴミ箱から拾ってきて飾ったものだ。
そこには居住区の公園で撮影した梅の花と一緒に写る笑顔のウメと、その隣に立つマサキの姿が映っていた。
ウメがご主人といっしょの写真、といつもニヤニヤしながらその写真を眺めていたのを思い出す。

―オレは、この笑顔が曇る所に耐えられるのか…?

―幸せになれるのか?あいつを捨てて。自分の悲願の為に、あいつを犠牲にしてそれで満足できるのか?




ピンポーン、という玄関のチャイム音が、マサキの意識を現実に引き戻した。

『マサキ君、ごめんさい、話があるの…いいかしら?』

ミカの声だった。戻ってきてくれたのかと思わずその声に反応し、駆けだして玄関のドアを開けて迎えた。

「ミカ、さっきはすまない…」

そう声を放った途端に、マサキは驚愕した。
目の前にいるのはミカではなく、ウメだった。
暗闇に灯る明かりの下で、ウメはうつむいたまま無言で玄関から中へと入っていった。

「ウ、ウメ…?どうしたんだ?さっきの声は?」

マサキは思い出した。ウメには他者の声を模倣できる機能がある事を。
普通に帰ってくればいいのに、なぜ自分を騙すような行動をした?
そして、なぜうつむいたまま何も言わない?
そのままゆっくりとマサキを押し出す様に部屋の中へと入っていく。

「ウメ、どうしたんだ?なぜ、何も言わない!?」

後ずさるような形で部屋の中央辺りまで来てから、ウメは静かに口を開いた。


『―ご主人、アタシを捨てて、あの女と一緒になるんすか?』


1085 :Ume made by machineD:2026/02/08(日) 20:52:25 ID:EilABuET
いつものウメとは全く違う雰囲気で放たれたその言葉がマサキの胸を貫く。
マサキは心臓を槍で一突きされたような感覚と、背筋が凍り付くような寒気を感じた。
そして直後に、確信した。ウメは先程の会話を聞いていたのだと。

マサキは何も言えなかった。雰囲気に気圧されたのか、自分でもその答えが出ていないからなのか。
そのリアクションにウメはうつむいて声を小さく漏らすと、口を開いた。

『―できるわけがないっす』

「―」

『ケッコンして子供が育っていくにはアイが必要だって、ご主人は言ってったっす。
 あの女が、ご主人を愛してる訳がないっす』

「いきなり、な…何を言って…」

壁にまで後ずさっていたマサキ。
壁際に据え付けれていたベッドにつまずく形で、尻餅をついた。
上を見上げればウメの姿がある。表情は髪に隠れてよく見えない。
ずっと大きく見える。自分よりも背の高いウメの威圧感を、初めて実感した。

『ご主人を一番アイしてるのは、アタシっす。
 ご主人が一番必要で、一番ふさわしいのは、アタシだけっす』

「ウ…メ…」

『ご主人も、アタシのコト、アイしてるっすよね?』

じっと心の奥までも見据える様な視線。
あの時と同じように、はぐらかす事の出来ない空気を感じ取った。
ウメは自分からの本気の返答を求めている。
マサキはただならぬ雰囲気に困惑するも、ぐっ、と拳を握ってウメの瞳を見つめ返した。

「…愛してるさ。お前は…もうオレにとって…かけがえのない家族になってたんだから…」

マサキの言葉を聞くと、ウメは動きを止めた。
そしてその直後、静かに、微笑んだ。

『やっぱり…ご主人は優しいっすね…』

―一瞬、マサキは、そのウメの表情が幼い頃に見た母親の表情と重なる感覚を覚えた。


『…ご主人、アタシとセックスするっす』

「―!?」

マサキはウメの口から放たれたその言葉に耳を疑った。

『ご主人とアタシにアイがあるなら、子供ができるはずっす』

「何を馬鹿な事を言ってる!?アンドロイドのお前にそんな機能がある訳がないだろう!?
 それに…オレはお前の事を家族だと、こど」

―言い終えるよりも前に、マサキの全身に電流が走る感覚があった。
身を乗り出して否定しようとした体がベッドへと沈んでいく。
手足が痺れる。立ち上がれない。手足が動かせない。

マサキの視線の先には、残渣の火花を散らすウメの尻尾状のケーブルが動いていた。
ウメはマサキの身体機能を電流で麻痺させたのだ。

『アイがあれば、奇跡は起こるっす。白雪姫も、ピノキオも、アイがあったからハッピーエンドになったんす。
 ご主人とアタシはケッコンして子供を産んで育てて、一緒に幸せに暮らすんす』

「ウ…メ…!」

狂ったとしか思えないウメの発言と瞳。
震わせる事しかできない手足を必死に動かし、拒否の姿勢を示した。
そして子供の様に思っていたウメの、情欲に染まった妖艶な顔と魅力的な肢体がマサキの眼前に迫っていた―。

(つづく)

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