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【R-18】Mシチュスレの引用スレ
1 :
名無しさん@狐板
:2020/01/19(日) 00:15:29 ID:bMTYbG3g
_________________
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| SS・長文はコチラ! |
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ノム|::| | | |::ト、〉
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|八`゙/ミ ノ⌒ヽW
/ \
当スレは某R-18スレの長文レス、SS、スレ主以外のAA・支援AAを投稿する場所です
それ以外での使用はお控えください
1073 :
Ume made by machineB
:2025/12/25(木) 02:28:53 ID:eYE3jYl/
―緊急事態が発生。今最も近くにいるマサキ調査員に緊急指令。
イレギュラーが発生しました。直ちにバトルロイドを用いて鎮圧して下さい。
イレギュラーの個体は、U-M83。今までにいくつもの高難度任務を遂行してきた凄腕です。
くれぐれもご注意を…
「イレギュラーだって!?」
イレギュラーとは暴走し制御不能に陥ったロボット全般の事を指す。
人間に対しても危害を加える恐れがあり、直ちに鎮圧する事が定められている。
無力化した後に再調整が施される事もあるが、人間に危害を加えた場合は基本的には破壊する事としている。
…人間を殺傷したロボットへの不信感や稼働させておく事への嫌悪感が非常に強いからだ。
「そんな実績のあるバトルロイドがなぜイレギュラー化なんてしたんだ?」
―それが、研究所で実験も兼ねてオーナー権限の譲渡の為オーナーの登録解除と新規登録を行った所、
それがきっかけでバグを起こしたようです。
新オーナーを攻撃し怪我を負わせた後、旧オーナーの自宅に向かい元オーナーを拘束、監禁。
命令を受け付けない完全暴走状態にあり、監禁されている元オーナーの一刻も早い解放が急がれます。
オーナーの登録解除、譲渡。
ウメがその言葉を聞いた時、恐ろしい嫌悪感と恐怖を感じた。
「…やめてくれヤミ、俺はもうお前のマスターじゃないんだ…!」
『何を仰るのですかマスター、ご安心下さい。私は常に貴方の傍におります。
オーナー権限を乗っ取ろうとしたハッキングは跳ね除けました。
私のマスターは貴方だけ。私達の仲を裂こうとする者は、全て排除します』
薄暗いキッチンにテーブルとイスが置かれている。
そのイスには恐怖にひきつった若い男が縛られた状態で座っており、ガチガチと震えて歯を鳴らしている。
傍らに立つのは、セパレートタイプのビキニを身に着け、コートを上に羽織ったバトルロイドだった。
『さあマスター、貴方のお好きなビーフシチューです。お召し上がり下さい。
仰ってくれましたよね、わがままな元恋人が作ったのなんかのよりずっと美味しいと。私の思い出の品です』
ヤミと呼ばれたバトルロイド…イレギュラーはビーフシチューを載せた盆を手に、生気の無い声で囁く。
その顔は微笑んでいたが、その瞳には全く光が宿っていなかった。
『もう3皿も作り直したのです。好き嫌いはいけませんよ、マスター。私が食べさせて差し上げます』
張り付いた様な笑顔でスプーンを差し出す彼女の視線に、元マスターは声にならない悲鳴を上げた―。
1074 :
Ume made by machineC
:2026/01/03(土) 20:51:25 ID:sV844g5a
「インプット完了。U-M83、君のオーナー登録情報はヒロ・サイモン上級調査官から
ニコラス・マッケンジー調査官へと変更された」
科学者の言葉がU-M83というアンドロイドに向けて告げられた。
M83は虚空を見つめるような目で動きを止めている。
「…どうした、M83。復唱したまえ。君のオーナーは誰だ?」
『わ、私のオーナーは…ヒロ、サイモン…、い、いえ…ニコラス・マッケンジー調査官…』
酷く歪な声で虚ろに呟くM83。
「まだ反応に混乱が見受けられるが、オーナー登録情報の変更は成功したようだ。
我々に先史文明の遺物を完全にメンテナンスできる技術力はまだないが、これで一歩進んだ。ご協力感謝する」
「いや、俺もそろそろ戦いから足を洗いたかったからな。あいつにも研究所にも十分儲けさせてもらったし、
これを元手にスローライフを始めさせてもらうよ、人間の嫁さんでも貰ってね」
「今までは遺物を発見した調査員が起動させてそのままオーナーとして登録されるケースが一般的だったからね。
引退、譲渡、売却したいオーナーの都合がつくようになるし、我々としても研究用の素体が入手できる」
「じゃあニコラス、ヤミをかわいがってやってくれ。ヤミも新しいオーナーとよろしくな」
ヒロは別段別れを惜しむ訳でもなさそうにフランクに別れの挨拶を告げる。
扉を開けて去っていく元オーナーの姿を、ヤミは微動もせず姿が見えなくなるまでじっと眺めていた。
「…ではこれからメンテナンスとデータ解析を行うとしよう。彼女を連れて帰るのはそれからだ、ニコラス君」
「へい、わかりました。…んじゃこれからよろしくな、M83ちゃん」
マスターと呼ぶべき新しいオーナーの言葉にも、彼女は無反応だった。
彼女の思考回路には、目まぐるしいほどに元オーナーの情報が錯綜し、動作を停止状態に陥らせていた。
―そして、数時間後。
「なあ、いい加減ちゃんと俺の事をマスターって呼んでくれよ」
『…は、はい…マ、マス…ター…』
「さっきからずっとこの調子だけど大丈夫なんですか研究員さん」
「登録情報の書き換えはきちんと成功しているよ。メモリー…今までの記憶との混濁が起きているんだろう。
さすがに今まで活動してきたメモリーを消去してしまったらどんな悪影響が出るかわからない、整理がつくのを待つしかない」
『…じゃない…』
「?」
「しかし、やっぱりいい体してるなあ。こんな刺激的な格好でエロい体した女が俺のものと思うと大枚はたいた甲斐があったってもんだ」
ニコラスがM83に手を伸ばし、頬から胸元、下へと下卑た手つきで彼女の肌をなぞった。
―その瞬間、M83の体がビクリと振動した。
『―触るな』
「…?」
直後M83はニコラスの手を汚いものに対するかの様に、パン、と音を立てて乱暴に払った。
『私の肌に触れていいのはマスターだけだ』
「っ!?」
驚いて飛びのいた直後、ニコラスの足を強烈な痛みが襲った。
ビームが足を貫通し、床を焦がしている。場に彼の絶叫が響き渡った。
M83の手には彼女の武器であるビームガンが握られている。
「…っっ、オーナーとして命令する、U-M83、直ちに銃を下ろせ!身動きするな!」
『…お前はマスターじゃない。オーナーでない者が私に命令するな…!』
「馬鹿な!?オーナーの登録情報の変更は成功したはず!完全なバグだ!」
『私はヤミ。私がマスターと呼ぶのはオーナーであるヒロ・サイモン上級調査官だけだ。
私をハッキングして乗っ取ろうと、そしてマスターから引き離そうとしたな…!』
呪詛の様な声でつぶやき、その眼光には憎悪の灯が宿っているかのように見えた。
彼女はそのまま身をひるがえし、ビームガンで窓を破壊するとそこから外へ飛び出していった。
突然の緊急事態に、けたたましいサイレンが研究所内に鳴り響く。
「イレギュラー発生だ!U-M83は暴走した!イレギュラーと認定、ただちに鎮圧せよ!破壊も問わない!」
―これが、事件発生時の記録映像です。そしてその後帰宅していた元オーナーの自宅に侵入しました。
彼からは救難の通信が送られた直後に通信が断たれています。恐らくは監禁状態にあると推測しています。
「なんて事だ…」
マサキはつぶやいた。そして、ウメはこのM83、ヤミと呼ばれたイレギュラーになぜか恐ろしいほどの共感を抱いてしまった。
もし自分が意志とは無関係にオーナーを書き換えられたら、どうなっただろうか?
彼女に同情心を抱くか?あんな行動を取らないと言い切れるか?とてつもない嫌悪感を感じた。
「ウメ、相手は凄腕のバトルロイドだ…しかも暴走しているからこっちに躊躇なんてない。やれるか…?」
不安そうな目でウメをマサキは見遣った。相手が相手だけに、さすがにウメを心配しているのだ。
『や、やるっすよ!ご主人!それがご主人の命令なら!』
自分にかかる靄の様な気分を振り払うかのように、大きく声を上げてウメは返答した。
「…ありがとう、だけど状況は不利だ。元オーナーが実質上の人質になってる。
このままの状況で威力が高く周囲を巻き込みかねないライトニングキャノンを使う訳にはいかないだろう」
『エ、エレキガンで戦えばいいっす』
「それだけで戦うのは危険すぎる相手だ。ウメ、あいつを引き付けて時間稼ぎしてくれ。
お前達が戦っている間にオレが、元オーナーを救出する。そうすれば安全を確保できるし思う存分戦えるはずだ」
『ご主人!危険っすよ!』
「状況は深刻なんだ。いつ元オーナーに危害が加えられるかわからない。ウメ、お前の力を信じてるぞ」
『…ぜ、絶対にやってみせるっす!ご主人に任せられたんなら、絶対にやれる気がするっす!」
ウメは思わず奮い立った。その姿を見てマサキは見つめ合いながら無言で頷く。
そして彼らの乗る移動用探査車は、目標のイレギュラーが立てこもる宅地に向かって走り続けていた。
1075 :
Ume made by machineC
:2026/01/03(土) 20:53:04 ID:sV844g5a
『さあマスター、たんとお召し上がり下さい』
カチャリ、カチャリとスプーンや皿の音が真っ暗なキッチンに鳴り響く。
そこにはイスに縛られた男が、アンドロイドにビーフシチューを食べさせられていた。
彼女はヤミと呼ばれかつて彼のバトルロイドとして数々の活躍をしてきた、イレギュラーである。
『美味しいですか?戦闘しか知らなかった私に、手料理を作ってくれと頼んできたのはマスターでしたね。
未体験の出来事の為、最初は何度も失敗しました。初めて美味しいと褒めてくれた時は、何にも勝る喜びでした』
虚ろな目で思い出すように語るヤミ。彼女の元オーナーであるヒロは体を震わせながらヤミの料理を嚥下していた。
「お…俺は…お、お前を捨てようとなんて、してない…!」
『何を当然の事を仰るのですか。マスターが私を他者に譲渡しようとするなどありえません。
どんな真相かはわかりませんが、私をマスターから奪い取ろうとした者の差し金に違いありません』
ゆっくりと空になった皿を片付け、カチャカチャと手際良く食器を洗うヤミの後ろ姿をヒロは眺めた。
表情が見えないのがヒロをさらに怯えさせた。
『料理の材料がなくなってしまいました。買いに行かなくてはいけませんが…私達を陥れ、
マスターを狙う不届き者がいるはずです。しばらく、静かになさって下さいね』
ヤミの手に握られていたのはボールギャグだった。元オーナーであるヒロは見覚えのあるそれを見てビクリと震えた。
『声を上げないで下さいね?ふふ、懐かしいです。このボールギャグを使って幾度もマスターと睦み合いましたね。
これをマスターが嵌める側になるなんて思いもよりませんでしたが…』
ヤミは妖艶な微笑を浮かべ、怯えるヒロの瞳を見透かす様に覗き込んだ。
機械であるはずのその瞳には興奮と狂気が宿っているように見えた。
―しばらく時を経て。
ぐったりとやつれた様にイスにもたれかける男。アイマスクをつけられて視界を塞がれ、
口にはボールギャグを嵌め、弱々しい吐息を漏らしている。
縛られて動けないからなのか、もう諦めたかの様に動かなかった。
『マスター、私の言いつけ通り静かにしていてくださったのですね、アイマスクは過剰だったかもしれません。
余計な物を見ないで欲しいから、私だけを見ていて欲しいから、独占欲でついやってしまいました。
あの時のマスターの気持ちがよく分かりました。私をそこまで愛して下さっていたのですね…』
顔を近づけて、ふう、と甘い吐息を顔に吹きかけるヤミ。
視界と口を塞がれたヒロはその感触と声で体を激しく震わせて声を出せずに恐怖でもがいた。
『そろそろ、トイレの時間ですね?尿瓶を用意します』
うっとりとした顔でヒロのズボンに手をかけ、カチャカチャとベルトを外し、ファスナーを下ろす音が静かに響く。
『マスター、恥ずかしがらないで。失礼いたします』
ヤミのしなやかな手がヒロの一物に触れ、その刺激に敏感に反応し膨れ上がった。
『…やはり、溜まっていらしたのですね。この様に膨れ上がってしまっては尿瓶に入りませんし、排尿もできません』
口の端を緩めながら、半勃ちの陰茎を弄ぶように愛撫するヤミ。
『思い出しました。起床時に勃起してしまっていた場合、私が処理しておりましたね。
マスターがこれを何とかしてくれと言っていたのを思い出します。ふふふ』
ヒロはボールギャグを嵌めた口でモゴモゴと唾液とともに声にならない声を漏らす。
ヤミが手に取った陰茎を根元から亀頭まで舐め上げる感触に、体を悶えさせる。
アイマスクで視界を遮断されているからか、ヤミの妖艶な声と股間に与えられる刺激が劣情を滾らせていく。
『射精へと導けば勃起が収まるのでしたよね?私にお任せ下さい』
一気に口に含まずにペロペロと亀頭の先端を舐めながら、陰茎を屹立させていく。
先端のカリの部分をほじる様に舌の先端をなぞらせ、同時に睾丸の感触を確かめる様に手で陰嚢を弄ぶ。
ヤミは自分の指先を舐めてたっぷりと唾液を塗り付けると、ヒロの肛門をなぞる様に弄り回し、
ゆっくりと指先を肛門へと差し込んでいく。
「ンンッ…!ア”ッ!!」
前立腺を刺激される未知の感覚にヒロは苦しい様な悶絶する様な声にならない喘ぎ声を漏らした。
陰茎は真上を向くほどにそそり立ち、ビクビクと脈動する様に硬く膨れ上がった。
待っていたと言わんばかりのタイミングで、その陰茎をヤミは口に含んだ。
『んんっ、ん、うんっ、んふっ、うむっ』
ヤミは恍惚した声を漏らしながら、激しく頭を前後させて唇でヒロの陰茎を扱き始めた。
唇は窄み、バキューム状態の口内では唾液に塗れた舌が亀頭に絡みつき、我慢しようがない刺激を与えている。
ぷはっ、とヤミが陰茎から口を離すと、ドロドロになった唾液が尾を引き、はちきれんばかりに硬直した屹立が姿を現した。
『もう我慢できない程に勃起していますね。マスターの感じる部分は全て把握しています。いつも私にフェラチオさせていましたからね』
うっとりした顔で囁くヤミ。
『マスター、勘違いなさらないで下さい。私は、こうしてマスターに奉仕して性欲処理をする事、嫌ではありませんでしたよ?
いつも最高に気持ち良さそうに射精して、ありがとう、愛してるよとお礼を述べてくれて、私は本当に嬉しかったです。
愛というのはその時の私にはよくわからないものでしたが、マスターが私を求めてくれている事は強く実感できました』
チラ、と上目遣いでヤミは微笑んだ。そして射精へと導こうと激しい口淫を再開する。
暗く静かなキッチンの中で、じゅぽじゅぽと淫らな音が響き続けた。
声にならない喘ぎ声がボールギャグの隙間から漏れ、限界をついに迎えた。
射精の瞬間を察したヤミは両腕を相手の背へと回し、喉の一番奥まで亀頭を飲み込む。
「――――ッ!!」
ぐっと抑え込まれたまま、体を震わせてヤミの口内に精液を放つヒロ。
ヤミは微動だにせずその迸りを喉の奥で受け止め、射精が収まるまで恍惚の表情を浮かべていた。
そしてぽん、と音を立てて唾液でドロドロになった陰茎がヤミの口から顔を出す。
ビクンビクンと脈打つ様に振動する陰茎を見てヤミは満足そうに微笑みを浮かべ、
口に手を当ててごくり、と喉を鳴らして味わう様に口の中の精液を飲み込む。
大量の射精を終えておきながらその陰茎は脈動しながら屹立している。
1076 :
Ume made by machineC
:2026/01/03(土) 20:54:14 ID:sV844g5a
『まだ収まらないのですね。思い出します。ヤミに挿入れたいよ、と求めていてくれましたね』
ヤミは囁くと、くいっ、とヒロのアイマスクをずらす。
解放された視界にはヤミの情欲に染まった瞳が飛び込んできた。
ゆっくりとヤミは羽織ったコートを脱いでいき、ゴトッと重量音と共に床に落ちる。
そして、パンツの股の部分をずらして向かって抱き合う様にヒロへと跨る。
ギシリ、とイスが重量で軋む音が鳴り響いた。
『やはり、ヤミの中に入れたいのですね?マスター。存分に私のナカを味わって下さいませ』
自分に跨るヤミを目の当たりにし、彼女が何をしようとしているのかヒロは否が応にでも理解した。
恐怖とは裏腹に屹立した陰茎。それを手に取ると、ヤミは自分の秘裂にあてがい、ゆっくりと腰を下ろしていった。
ヒロは体をバタつかせ、激しく拒否反応を示した。幾度も体を重ねてきたはずの相手。
だというのに、自分を犯そうとしているヤミが全く別のとてつもなく恐ろしいものに思えていた。
むぐ、んー、んぐー、ボールギャグに遮られて拒絶の言葉が声にならない。
自分の陰茎がヤミの陰唇をかき分け、飲み込まれるように入っていく瞬間を目の当たりにしていた。
『―んっ!』
ヤミの口から恍惚の喘ぎ声が漏れるとともに、膣内の一番奥まで陰茎は飲み込まれた。
根元まで入り込んだその結合部が、この時代で初めてアンドロイドによるマスターへの逆レイプが行われた事を示していた。
豹変したヤミに犯されたという事実を認識したヒロは、本日幾度もの声にならない声を上げた。
『感じます…マスターのペニス、私の中で膨れ上がって性感に震えています…
マスターと繋がって私も最高に気持ちいいです…!もう我慢できません、マスター、動いちゃいますね!』
焦点の合わない瞳で快感に震えるヤミは、先程まで主張していたオーナーへの性処理、奉仕という建前すらも放棄し、
快楽を貪ろうと激しく腰を上下にゆすりはじめた。
その勢いでイスがギシギシと床に音を鳴り響かせ、マスター、マスターとヤミの求める声が喘ぎ声と共に響き渡った。
今まで自分の上で腰を振らせて奉仕させていた時とは全く違うヤミの姿にただただ狼狽しされるがままになった。
『あっ!あ、あん、あっ、はぁん!』
クールな顔で任務をこなしてきた凄腕のバトルロイドとは全く面影の無い蕩けた表情で思い切り喘いで見せるヤミ。
その瞳は狂気すら感じる程に情欲の火に燃え上がり、それを下から見上げるヒロは震えを隠せなかった。
『はっ感じますか、マスター♪私の愛を』
見つめ合いながら腰を叩き付けるヤミは、声と唾液の漏れるボールギャグを離す。
今まで抑えてきた声が吐き出されるその瞬間、その口はヤミの唇で再び塞がれた。
黙らせてやるとでも言うような、侵略的な熱烈なキス。ヤミの舌はヒロの舌と絡み合い、貪欲に口内を蹂躙するように暴れ回った。
『愛してます、愛してますっ、マスター!一緒に絶頂を迎えて、私の奥までマスターの愛を注いで下さいっ』
舌を絡め合いながらそのまま、大きな喘ぎ声と共に絶頂を迎えるヤミ。
それと同時にヤミの膣内は中の陰茎から精液を搾り取らんと激しく絞まり、あえなく射精へと導かれた。
ヤミにイカされてしまったヒロは強烈な快感に放心したままヤミの中に精液を放っていた。
口からは唾液と荒い息が漏れ、まるで魂まで吐き出されるような脱力感に襲われた。
『マスター…愛してます…ずっと私を、ヤミを離さないで…』
射精が終わってなお、ヒロを抱きしめながら愛を囁くヤミ。
そして弱い吐息だけが響き、再びキッチンに静寂が戻る。
…ヤミはヒロというオーナーの下で過ごしてきた。彼の愛とは性行為を前提とした相手を求めるものであった。
故に、ヤミの学んだ愛とは相手を求めるものであり、一方的なものである形となっていた。
そして共に交わす快楽と愛は同一という、歪んだものとなっていたのかもしれない。
―今の彼女に、同意の伴わない性行為は強姦であるという認識は恐らくなかった。
それこそが、人間の命令に従わず、危害を加えるものであるイレギュラーという認識も…。
暗い室内。明かりの消されたキッチン内にまるで死体の様にぐったりした男と、
その傍らに座り込む美女の姿があった。
遠くから響く車両の駆動音を感じ取った彼女は、ピクリと反応してつぶやいた。
『―人間が一人。そして同シリーズのバトルロイドが一体。
どうやら、私達の敵がここにやって来たようです』
抑揚のない声で呟きながら立ち上がる女の姿。
『…片付けて参ります。戻ったら、マスターのお好きなビーフシチューをお作りします。
そして、また愛し合いましょう』
寒気がするような張り付いた微笑。狂気を奥に宿した瞳でそう告げると、女はコートを拾い上げ歩きながら羽織った。
そしてそのポケットから冷たく光るビームガンを手に部屋を後にする。
『…!あんたが、U-M83っすか』
複雑な気持ちの入り混じった声で、ウメはつぶやく。
その言葉に返答する事もなく、感情のこもらない瞳で一瞥する。
『あ…あんたにはイレギュラー認定がされてるっす。おとなしく中にいる人を解放して投降してほしいっす…!』
『私はヤミ。マスターを私から奪おうとする者は誰であろうと排除する』
ウメの勧告に返答すること無くビームガンを構え、ウメへと向けて発射する。
素早く飛び退いて回避したウメはエレキガンを構え応戦の体勢に入る。
対話の余地なく、イレギュラーと化したバトロイド、U-M83ことヤミとウメの戦いは始まった。
『(ご主人、こいつはアタシが何とかするっす。どうか、無事で…!)』
離れて住宅へと潜入し元マスターを救出しようとしているであろうマサキの事を思い、
ウメはエレキガンを握りしめ目の前のヤミを睨みつけた。
(つづく)
1077 :
Ume made by machineC(戦闘編)
:2026/01/09(金) 01:44:30 ID:XuP4awJb
ウメにとっては初めてのエイリアン以外の戦闘の相手だった。
それも武装し戦闘経験を積んだ同シリーズのバトルロイド。
しかも状況から武器も制限されている。非常に分が悪かった。
にらみ合いを続けた後、ヤミが先に仕掛けた。ビームガンから放たれる銃撃を飛び退きながら回避するウメ。
一方的に攻められてばかりなるものかとエレキガンをヤミへと放つ。
自分に迫る電撃にたじろぐことなく、ヤミは羽織ったコートを翻した。
『無意味…』
コートからエネルギーの磁場が発生し、電撃はそれに阻まれ命中する事無く飛散した。
『なんすか!?』
コートにはバリアを展開する装置が組み込まれているようだった。
ウメのエレキガンではバリアを破る事は出来ない。
『エレキガンが効かないっす!』
背中に背負ったライトニングキャノンをちらりと見遣る。これならバリアを破る事もできるかもしれない。
…だがこれを使う事は禁じられている。これを使ったら背後にある住宅にいる人間も巻き込みかねない。
人質は当然、自分の主人にも危害を加える危険性がある。
ご主人が救出するまで、何としてもこのまま耐え続けなくてはいけない。ウメは歯噛みしながら唸った。
『どこを見ているの?』
ウメへと向かってビームガンのビームが連発される。
ウメは素早く銃口の向きから軌道を予測し、電撃の連射で全てのビームを相殺した。
『…!』
驚いた直後に自分に向けて放たれた反撃の電撃をコートのバリアで防いだ。
間を置いて銃撃戦が再開される。ビーム弾と電撃弾が炸裂し合い、この二体の銃の腕前は拮抗していた。
簡単に倒せる相手ではない事を理解したヤミ。このまま銃撃戦を続けても膠着状態になる。
そう判断したヤミはコートで身を覆いながらバリアを展開し、真っ直ぐ一直線にウメへと接近していった。
『この!このっ!』
接近を阻もうとエレキガンを集中して放つウメ。しかしどの攻撃もバリアを破る事は出来ない。
出力を最大にしても衝撃にわずかに足を止めるだけでその歩みを止める事は出来なかった。
無表情でウメを見据えたまま接近するヤミの瞳に、ウメはたじろいだ。
そして、残り数歩の距離にまでなった時、ヤミはコートの内部からメタルマチェットを抜いた。
特殊な合金で作られた鉄も切り裂く凶悪な光を放つ鉈が握られ、それがウメへと振り下ろされようとしていた。
『―っ!』
一閃、二閃とマチェットが空を切る。その度に空気が悲鳴を上げ、一撃でも直撃すればひとたまりもない事をウメは感じ取った。
続け様に放たれる斬撃に体勢を崩すウメ。ガキンと耳に響く鈍い金属音が響き渡る。
ギリギリのところで避けたウメは、そのままの勢いでヤミの懐に体当たりした。
『この距離でもバリアは張れるっすか!?』
密着した体勢でエレキガンを発射するウメ。しかし僅かにヤミの動きが早かった。
コートが電撃の直撃を阻み、直接のダメージに至っていない。
『くうっ…!』
反撃にマチェットを握ったままの拳が繰り出され、ウメのエレキガンを弾き飛ばした。
「エ、エレキガンが!」
音を立てて地面に落ちるエレキガン。ウメは慌てて拾おうと手を伸ばす。
ヤミはその隙を逃さず、強烈な蹴りをウメヘと叩き込んだ。
『うあっ!』
声を上げて地面を転がるウメ。その上からヤミのマチェットが間髪入れずに繰り出される。
尻尾状のケーブルを使い素早く体を起こしたウメは、素早く振り下ろされる前の腕を抑え込む。
ギリギリと押し合いを続けるウメとヤミ。力は拮抗しているようだが僅かにヤミが押している。
ウメの眼前にメタルマチェットの凶刃が少しずつ迫る。
―その瞬間だった。ウメの視線の先に、ぐったりした男を抱えて住宅から姿を現すマサキの姿が見えた。
ウメとの交戦中の隙を突き、既に裏口から侵入を果たしていたのだ。
『…っ!?!??マスター!?』
ウメの視線から、それと同時にヤミもまた事態に気付いた。
押し合いを放棄し、マチェットも放り投げて一直線にヒロを抱えるマサキの下へと駆けた。
『貴様あああっっ!!!私のマスターをどこへ連れて行く気だああぁっっ!!』
激しい怒りをあらわにしたヤミは、走りながらビームガンをマサキに向ける。
ビームガンの照準が正確にマサキの体を捉えた。
『ご主人んんんんっっ!!!』
ヤミの絶叫にも負けない悲痛な声でウメは叫んだ。
1078 :
Ume made by machineC(戦闘編)
:2026/01/09(金) 01:53:57 ID:XuP4awJb
エレキガンを落としたウメは必死でこの状況を打開する方法を頭の中で模索した。
対峙しているヤミというバトルロイドの思考と行動、そして、自分の持つ機能をフルに動員し、
この状況を打破する手段をこの僅かな瞬間にシミュレートしていた。
「―動くな!ヤミ!マスターの命令だ!」
ヤミの聴覚センサーに、狂おうと決して忘れえぬ元オーナー、ヒロの声が響き渡った。
―それは、記録映像から拾った音声データからウメが模倣し発生したものだった。
マサキの音声をメモリーに保存して再生した様に、ウメには声を模倣できる機能があるのだ。
『―――マ、マスター!?…い、いや…こ、これは…』
―い、いや、違う。
状況を考えれば彼本人が声を発する事はあり得ない。この音声は模倣したものだ。冷静に分析すればすぐに理解できた事だ。
にもかかわらず、ヤミの聴覚センサーは思わず反応してしまった。
彼女がオーナー情報を書き換えられてもなお変更を認める事ができなかった存在。
彼の声に人間と同じ直感的な反射が起こった。
思わず視線を声の元であるウメの方へと向けてしまった。
―そこには、その僅かな隙に背負ったライトニングキャノンを素早く構えるウメの姿があった。
その瞬間に、ヤミは思考を巡らせた。
相手の武器の威力は未知数。バリアで受けるべきではない。回避行動に移るべきだ。
そして未知の武器を前に、もう一つの可能性をヤミの狂いかけた思考回路がはじき出した。
一瞬の躊躇の後、ヤミはコートで体を覆い、バリアの出力を全開にしてウメのライトニングキャノンを防ぐ選択を選んだ。
『―絶対に、やってみせるっす!ご主人が、ご主人が信じてくれたんだから!』
ウメはライトニングキャノンの出力、収束を針の目を通すかの如く神経を集中させて発射態勢に入った。
もし外したり発射の調整を誤れば、主人であるマサキや彼の抱えるヒロも被弾する危険がある。
人命を最優先するアンドロイドであれば絶対にできない判断を、ウメは選んだ。
そして、皮肉にも人間に危害を加える事も厭わなくなったヤミは、元オーナーに被害が及ぶ危険性を優先させた。
ライトニングキャノンから放たれた電撃の放射は、細く、そして正確にヤミの体を補足した。
その収束された一撃がバリアを直撃する。激しい電撃が散らされて周囲を眩しく照らす。
その勢いにたじろぐヤミ。自分の持つエネルギー全てをバリアに回してライトニングキャノンの電撃を防ごうとする。
―その瞬間、コート内部のバリア発生装置が火花を吹いた。
そこは、エレキガンを防いで損傷した箇所だった。バリアは僅かに綻びを見せ、そこから膨大な電力がバリアの内部へと侵入し、ヤミの体へと流れていった。
『あああああアアアァぁぁっッッ!!!』
全身に電流が駆け巡る感覚に震えながら、激しい絶叫を上げるヤミ。
コートのバリア発生装置は爆発し、その勢いで吹き飛ぶヤミ。全身から帯電した火花を散らしながら、地面を転がる。
「うわっ!」
予期せず自分の視界へと転がってきたヤミの体にマサキは驚きの声を漏らす。
そして彼女が行動不能に陥っている事を確認すると、ウメの方を見遣り、無言で頷いた。
『ご主人…!』
その仕草と表情だけでマサキが自分に何を言おうとしたのか理解できた。
事件が起こってから、緊張し通しだったウメの表情に初めて安らぎが戻った。
『マ、マス…ター…マ、ママ…マ、マスター…』
仰向けになった状態で、全身から火花を散らしながら首と手をぎこちなくヒロへと向ける。
その向けられた視線と震える手を視界に捉えたヒロは、ヒイィ、と怯える声を上げて目を逸らした。
その恐怖を感じ取ったマサキは一瞬ヤミの顔を見て悲しそうな顔を浮かべ、そのままヒロを抱えてその場を駆けた。
自分から遠ざかっていくマスターと呼ぶ者の姿を、ヤミは絶望に染まった表情で眺める事しかできなかった。
そんなヤミのもとへ歩みを近づけるウメ。全身が激しくショートし、あらゆるパーツが機能を停止している。
指先すら動かす力も残っておらず、もはやとどめをさす必要もない。一目見てそう確信するには十分な姿だった。
目の前のイレギュラーと化したヤミの姿が他人事とはウメには思えなかった。
もし、あの状況になったら自分も同じ反応と行動を取るだろうと確信していたからだった。
『マ、スター…イかないデ…、サビしい…ユルサナイ…』
うわ言の様にヤミは言葉を漏らす。
『…すてナイで』
その言葉を最後に、ヤミは機能を停止した。その瞳は完全に光を失い、虚空を見つめていた。
涙を流せる機能があったら間違いなく泣いていただろう。ウメは思い、瞳に涙を溜めた。
そして、そのままそこに佇んでいた。
サイレンが鳴り響いている。マサキが人質を確保した後に通報したのだろう。
救護車に続いて警察車両がパトランプを光らせながらなだれ込んでくる。
イレギュラー発生事件は、収束を迎えようとしているのだ。
車両から降りてきた警官隊が機能を停止したヤミを、
壊れたマネキンの様に雑に回収して運んでいく光景をウメはずっと無言で見ていた。
「ウメ!」
彼女を現実に引き戻したのはマサキの声だった。
「―つらかっただろうな」
イレギュラーを回収し、この場から去っていく車両の方向を見ながらマサキは悲しそうにつぶやいた。
「よく、頑張った。ウメ。ありがとう」
『ご主人…!』
ウメは全てが報われた気がした。
瞳に溜めた涙が溢れ出た。悩みと悲しみに暮れていた顔は、歓喜に変わり、涙を流して笑った。
そのままマサキへと抱きつき、胸に顔を埋めた。まるで潜り込む様に顔をぐりぐりと押し付ける。
いつもならくっつくな、離れろと言うマサキも目を閉じてされるがままにし、腕をウメの背中に回した。
『ご主人、ナデナデしてほしいっす!」
満面の笑顔で告げるウメに、マサキは苦笑しながらゴシゴシと強くウメの頭を撫でた。
その感触にウメは今までで最高の笑顔を浮かべた。
至福の時間。ずっとこうしていたいと、ウメは思っていた。
オーナーを愛する故に狂ったヤミの事を考え悩んでいたウメ。
だけど悩む事も迷う事もない。
だって自分には最高のご主人が、自分を必要としてくれて、一緒にいてくれて、笑い合えるのだから。
―慌ただしくなる現場。警察の事情聴取、行政官達とバトルロイド研究所の科学者達が議論する声。
いつの間にか駆けつけていたマスコミ達がひしめき合っている。
―U-M83がイレギュラー化した?あの高性能なバトルロイドを誰が鎮圧したんだ?
―無名の調査官と最近発掘された未知のバトルロイド?これは大事件だ!
―元オーナーを監禁!?救急隊によれば何か暴行の痕もあったらしいぞ…!
―この件で研究所と調査隊はどうするつもりなんだ…
マスコミと警官、野次馬達がどよめき合っている。
話題の渦中にあったマサキとウメは向けられるマイクとカメラに困惑するばかりだった。
「すいません、あなたがこの事件を解決した調査官ですか!?ぜひ一言コメントを…!」
「あ、いや…!ちょっとそういうのは後で…!」
「ほんの少しですから!マサキ・ミチハラ調査官!…えっ!?ま、まさかあなたはマサキ君!?」
マイクを向けた報道官の女性は、マサキの顔を見て驚きの顔を浮かべた。
その姿に同様のリアクションを見せるマサキ。
「えっ!?まさか、君は…ミカ!ミカ・ヒラノじゃないか!?信じられない!地球以来じゃないか…!」
―そう、ウメもまた、ヤミと同様の苦悩を抱えるようになるのはこれから…
(つづく)
1079 :
Ume made by machineD
:2026/02/08(日) 20:36:56 ID:EilABuET
ウメは床に膝を抱えて座りながら歯噛みしていた。
その視線の先には、自分の椅子に座りながらマサキと親しげに会話する女の姿があった。
―そのイスは、ご主人が自分の為に買ってくれたイスなのに。
あのイレギュラー騒動の後からここ最近は一緒に任務にも行っていない。
書類や通信ばかりしていて、そして時折訪れるミカ・ヒラノという記者…
「じゃあまず、どうしてバトルロイドを所有したのを聞かせてくれるかしら?」
「ああ、一通り調査の終わった遺跡の建造物に隠された箇所があったみたいなんだ。
そこはエイリアンが既にねぐらにしててな、武器も通信機もダメにして逃げ回る羽目になった。
生きている設備があって藁にも縋る気持ちでセキュリティシステムを作動したら、バトルロイドが…
まあ、あのウメが起動した訳だ」
マサキの視線には不機嫌な視線でこちらを見つめるウメの姿があった。
「ああ…昔に聞いたバトルロイドを無断で起動させて登録した民間の調査員ってマサキ君の事だったのね…」
「し、しょうがないだろ、命がかかってたんだしあの時は考えてる余裕もなかった」
そうだ、あの時は自分がご主人を助けたんだぞ、という目でウメは頬を膨らませた。
「そして、一通り調査や性能テストが終わった後、借金と任務を請け負う義務と引き換えに所有を認められたんだ」
「バトルロイドの所有なんて限られたエリート調査官や軍の高官でもないと認められないのに、どうしてかしら」
「一度登録したオーナーを解除するのはセキュリティ上非常に難しいらしいんだ。
そもそもが地球の技術をはるかに超えた遺物だから、下手に弄るとどんな不具合が起きるかわからないらしいんだ」
マサキの頭をふとよぎったのは、あのU-M83…オーナー登録変更を認められずイレギュラー化したヤミの事だった。
「それから、まあ何だ…研究所や軍にとってウメの評価が低かったんじゃないかってのはある。
テストの結果、思考や感情の機能ばかりが過剰に発達していて、バトルロイドには適さないって。
特に命令への遵守性に欠けるとかそんな風に判断されてた。
非戦闘用のアンドロイドを戦闘用に改造したんじゃないのかとか言われてたっけな…それが原因かな」
そう言えば、ウメがかつてテストを受けた際にこっちの質問に答えてくれなかったとぼやいていた事を思い出したマサキ。
確かに向こうから見れば戦闘に不要なものばかりが多く、バトルロイドには不適格に見えるだろう。
だからこそ使い捨てる感覚で自分の様な素人に預けちゃってもいいと判断されたんだろうな、とマサキは思い起こした。
…ウメがマサキに好意的だった理由のひとつだったのだろうか、その扱いが本人(?)にとっても幸いだったのか…。
「複雑な事情があるみたいねえ…先史文明のテクノロジーの動力とかそういうのとか結構こだわりそうだけど」
「ああそうだ、ウメは電力で動いているんだ。別段珍しくもないエネルギーで活動してるってのも価値が低いって判断されたのかもな」
「電力?そんな旧時代のエネルギーでバトルロイドが?」
「調査したところウメの体内のエネルギー炉は人間の体内に収まるサイズの発電所みたいなものらしくて、
常に電気を生み出して充電していて、半永久的に活動できるんだってさ。戦闘にもそれを転用してる。
よほどエネルギーを使いすぎない限り補給の必要も無いらしくて、エネルギー補給なんて殆どした事がない」
ウメは適当に相槌を打つように尻尾状のケーブルを軽く振って見せた。
ここからエレキガンに電力をチャージし、ライトニングキャノンの使用時には接続する。
電力の補充もいざとなればこれによって行うが、マサキが前述したように殆どした事はない。
「えっ…燃料とかそういうのは?半永久的に活動できる?とんでもないテクノロジーじゃない。
エイリアンのコロニーが急速に駆逐されていったのはマサキ君達がハイペースで活動出来からってこと…?」
「…確かにメンテナンスやエネルギー補給の必要性がなかったのと、借金返済って理由で任務を受けまくってたけど…
完全に向こうの予想を超える成果を上げてたって事か…」
マサキは思い直す。必死にやってきたあの目まぐるしい日々の活動が、確実に実を結んでいたという事なのか、
そしてあのウメも…大した期待もされてなかったのに予想外の成果を上げて、自分に尽くしてくれたのか。
マサキはふてくされてうずくまりながらそっぽを向くウメの後ろ姿を見て思うのだった。
「…でもな、こんな事簡単に話しちゃっていいのか?記事にできるのか?軍の機密情報だろ多分」
「大丈夫よ、どうせ検閲がかかるんだから」
話し過ぎたと感じたマサキにミカは微笑んだ。彼女、ミカ・ヒラノはこの植民星でも最大のマスメディア、
ジオ・メディアの記者である。行政部とも大きな繋がりがある、半官半民の大企業だ。
そんな企業に勤める事になっていたとはマサキにとって驚きだった。
元は自分と同じく地球の貧民層に過ぎなかった彼女が…。
1080 :
Ume made by machineD
:2026/02/08(日) 20:38:03 ID:EilABuET
「マサキ君がバトルロイドを使ってそんなすごい事やってたなんて驚いたわ」
「オレもだよ。子供の頃は学校や近所でよく遊んでた君とまた会うなんてさ」
「…あの頃はよかったわね。確かに生活は楽じゃなかったけど、それなりに楽しかった」
二人の中に特別な空気が流れているのをウメは察してさらに不機嫌になった。
自分の知らないご主人の事をこの女は知っている、と嫉妬と敵意にも似た感情が走る。
「―あの時のマサキ君は、本当にひどかったわね。…お母さんが亡くなってから」
「…ああ、あの時は本当に…全てがどうでもいいって思えた。抜け殻になったような気分だった。
あの時、君が声をかけてくれなかったら、今生きていたかどうかわからない」
「私達もそうだったけど、マサキ君はあの後すぐに地球を離れちゃったのよね」
「もう頼るものがいなくなったし、つらい事ばかり思い出しそうだったからもう宇宙に上がる事を決めたんだ。
…でも地球を離れても孤独な事に変わりはなかったし、この星に来てからいい事なんて何もなかったよ」
マサキが力なくつぶやくその言葉を耳にしたウメは、悲しそうな顔をした。
「気が付いたら地球に帰りたいって、いつも思うようになった。皮肉だよな。
もう未練がないと思って離れた地球にあれだけ思い焦がれるなんて。
いつもそうだ。なくしてから初めて分かるんだ…」
いつもなら絶対に自分から話す事のない悲しい過去を淡々と話すマサキの姿に、ウメは悲しさと寂しさを覚えた。
それ程にミカという旧知の相手に思い入れがあるのかと歯噛みをするような感覚だった。
「―だから、ミカに会えてすごく懐かしかった。まるで遠い昔に置いてきたものを見つけたような気分だったよ」
「私もよ。あのツンツンしてた意地っ張りのマサキ君がねえ…」
「ミカも綺麗になった。不細工とかバカにしてた近所の悪ガキたちは見る目が無かったな!」
「あはは…、色々あったのよ、私にもね」
ウメをそっちのけにして思い出に浸り再会を喜ぶ二人の空間に、ウメの不快感はこの上なく高まっていた。
自然に尻尾状のケーブルがブンブンと左右に振れている。
「お茶、いただくわね。…っ!マサキ君ったら随分粗末なお茶飲んでるのね…」
「あ…す、すまない…!いつもオレが飲んでる安物だった…!」
粉末状の安物の茶なんかじゃない、もっといい茶葉があった、と慌てて棚を探し出すマサキ。
「せっかく有名人になったんだから、少しはいい生活をしてないとバカにされるわよ」
ミカは苦笑した。ウメはその苦笑を見てひどく腹立たしく感じた。
「これから目立つ事になるだろうし…服もいいものを着てないと、色々損するわよ。
…よかったら、私が一緒に選んであげるけど…一緒に行く?」
「ハハ…正直贅沢できる気分じゃないんだ。今まで暮らしてきた時の貧乏性ってのもあるけど、
ウメでの借金と、地球に帰りたいって夢があるからちょっとさ」
「ダメよ、皆見てくれで色々と決めつけて見下してくる人達なんていくらでもいるんだから。
これからは色々と気遣いしないと。今度、一緒に行きましょ。取材も兼ねて、ね」
「そ…そうか?でも、一緒に行ってくれるのはありがたいかな…」
正直気が進まないマサキは言葉を濁しながらぎこちなく茶を淹れ直していた。
そしてミカの前に新しく湯気を立てる茶が注がれた所で、その湯飲みを乱暴に奪う影があった。
「ウ、ウメ!」
ウメはその湯飲みを手に取ると、淹れたての熱い茶を一気に目の前で飲み干した。
目の前で繰り広げられる光景に呆気に取られるミカ。
「…あ、あなた…お茶飲めるの?味、わかるの?アンドロイドなのに」
『…カテキンと、カフェインの成分があるっす。やや強めの渋み成分が』
成分や味覚を感じ取れるだけでおいしいという感覚や感情に直結しない、自分の味覚センサーをウメは苦々しく思った。
人間であれば、美味しいよと言って、マサキとともに一緒に食事やお茶を楽しむ事ができるというのに。
「ウメ!何のつもりだ!?それは、ミカに淹れたお茶だろう!」
『ご主人が淹れてくれたお茶を悪く言うヒトに、そんな事してあげる必要なんてないっす!どうせまたけなすっすよ!』
「そんな事はどうでもいいんだ!オレならいい、どうしてお客さんにそんな失礼な事をしたんだ!
人に迷惑かけたり不快な思いをさせるなって、いつも教えてるだろ!」
『不快な思いをさせてるのはこのヒトの方っす!ご主人に口出ししたり、自分の思うようにしようとしたり!
ご主人だってイヤな思いしてて何も言わないのに、何でアタシだけ叱るんすか!?ひいきっす!』
今まで見せた事のない態度で怒り反論してくるウメに面喰いながらも、
マサキはここで引いてはいられないと強く𠮟る態度を変えない。
それはマサキの親心から来るものだが、今のウメには理不尽な贔屓の様にしか感じ取れない。
人間というだけで、昔からの友達という理由で、自分を除け者にしてぞんざいな扱いをできるのかと。
「ウメ!まずはミカに謝れ!」
『…ごめん、なさい、っす…』
「心がこもってない!もう一度だ!」
「ちょっとマサキ君、もうやめない?別に私は気にしてないし…」
「そ、そうか…?でもこれはちゃんと叱らなきゃいけない事で…」
ミカが間に入った事でウメの不満と怒りは爆発した。
『なんなんすか!ご主人!そんな女に甘くするなんていつものご主人じゃないっす!』
「そんな女だって!?いつもじゃないのはお前の方だ!ウメ、しばらくここから離れて反省しろ!」
ウメは𠮟りつけるマサキの顔をにらみながら、無言で後ずさる。
そして瞳に悔し涙を溜めたまま、振り返って乱暴に玄関のドアを開き、外へ出た。
叩き付けられるようなドアの音が響き渡った。
―しばしの無言の静寂が包む。
「…マサキ君、あの子は一体どうしたのよ」
「すまない…いつもはあんなんじゃないんだ…不愉快な思いをさせて、悪かった」
「でも、いいの?バトルロイドを外に放り出しておいて」
「…あいつもバカじゃない。おかしな事はしないさ。冷静になればちゃんとわかるはずなんだ。
自分が悪かったって、謝りに来れるはずだ。…オレだって、親に叱られた時はそうだった」
マサキは残念な顔をしながら、つぶやいた。
子供の頃、母親に叱られて口喧嘩をして、家を飛び出していった事を思い出す。
あの時、やっぱり自分の方が悪かった、母親に嫌われたくない、そう思ってうつむきながら帰った。
きっとあいつだって自分と同じ様に気付いてくれるはずだ。その時はちゃんと迎えてあげよう。
マサキは自分の思い出と重ね、去っていったウメの方向を見つめていた。
―ウメは無言でうつむいたまま、ズンズンと歩みを進めていった。
ご主人のバカ、と言いそうになる口を抑え、離れていくマサキ宅を振り返る。
マサキは自分を追って来なかった。何度も振り返ったが、やはり追って来なかった。
その事を思い知らされたウメは溜めた悔し涙を瞳からこぼし、行く当てもなく一人歩き出していった。
1081 :
Ume made by machineD
:2026/02/08(日) 20:39:32 ID:EilABuET
―こちら小夜。あ、ウメちゃん、いきなり通信なんてどうしたの?
イレギュラー事件聞いたよ、よくやったね、すごいじゃない。
…あ、オーナーの登録変更?それが理由だって?
まあ…ひどいよね。気持ちはわからなくないかな。
でもいくらなんでやり過ぎだよ。
私だってマスターが本気で自立したいって言ったら寂しいけどさすがにね…。
本人が本気で望んでないのを無理にってのはちょっと私でもできないな…。
―こちらU-M10。なぜ私に通信を?U-Me…いえ、ウメでしたね。
あのイレギュラーと成り果てたU-M83を鎮圧してくれた事、私からも感謝しています。
…オーナーの登録変更?…たとえどんな理由があろうとも、人間の命令に従わない事は許されません。
オーナーが必要としていないのであれば、それに従うのが私達の義務です。
…たとえ、それが…どんなに不本意でも…。
ウメは通信を終了した。
心の中に渦巻く悩みを、交友のあったバトルロイド達に尋ねずにはいられなかった。
今の悩みが紛れるかと思ったが、やはり渦巻く感情はおさまらなかった。
そしてウメはあてもなく居住区を一人で歩いていた。
初めて許された単独での自由行動。密かに憧れていたはずのそれが、マサキという主人がいないだけでまるで気持ちが違って感じた。
最寄りの食料品店、雑貨屋、飲食店、人通り。いつもなら目を輝かせて眺めていたはずのその町並みが急に色褪せて見えていた。
いつも横に並んで質問したりお喋りしていた存在は、今はいない。
すれ違う、談笑しながら一緒に歩く男女のカップル。はしゃぐ子供と一緒に歩く家族連れ。
そして、ベビーカーでを押しながらこれからの家庭の事、静かに眠る赤ん坊の事を話し合う夫婦。
地球から遠く離れても続く、人間の確かな営みがそこにあった。
―どうして、自分はああなれないのだろう?
結婚できないのだろう?子供を産む事ができないのだろう?
自分が人間ではないから。機械だから。
幸せな人間の家庭を見せつけられる度に、ウメは自分という存在の現実にいたたまれなくなった。
そんな光景を直視できなくなった彼女は、人が通らない裏路地へと足を向けていた。
薄暗く狭い道。無機質な配管の数々、薄汚れた機材、ゴミ箱。彼女の心境をそのまま表現する様な陰鬱な光景が続く。
あてもなくただ時間を浪費するためにウメはたったひとりの自由時間を過ごしていた。
「どうしたのねーちゃん、こんなトコ一人で歩いててさぁ」
いかにも軽薄そうな若い男が二人、ウメの歩く目の前に現れる。
「すっげー巨乳じゃん、それにそのカッコ超エロいんだけど?」
「もしかして俺ら誘ってちゃってたりする?」
見た目から容易に想像できるような、ガラの悪い男達。そんな存在がウメの姿を目の当たりにすれば当然予想通りの言葉を投げかける。
ウメは一瞥すると、無言のまま避けて進もうとする。
「なんだよ無視しちゃってさあ、あそぼーぜ、俺らとさ」
「…ん?こいつ人間じゃなくてアンドロイドじゃね?」
ピクリとその言葉にウメは反応すると、そのまま無言で通り去ろうとした。
「アンドロイドが人間様をシカトしてんじゃねーよ」
「人間じゃないんなら好都合だろ、オッパイ触らせろよ」
ウメを通すまいと前に立ちはだかり、人間でないと知るや下卑た顔で下心を丸出しの発言を臆面と無く言い放つ。
『…どいて欲しいっすよ、オーナーでもないあんた達の言う事を聞く筋合いはないっす』
「機械がエラそうにしてんじゃねーよ、付き合えってんだよ」
男が声を荒げてウメの腕を乱暴に掴む。ウメは怒りのこもった目で男の腕を掴み上げる。
見た目は女であろうと、そもそもが機械であるウメにとってはただの人間の男の力などどうと言う事はない。
「い、いでででで!アンドロイドが人間に危害を加えていいのかよ!イレギュラー認定されるぞ!」
よからぬ事を考えて自分から手を出してきたくせに、抵抗されれば立場を盾に取る悪辣さにウメは心底腹立たしく感じた。
その機械の瞳には怒りの光が灯り、腕を掴む力は緩む事がなかった。
「…っっ、ちょっと待てよ、こいつ…あのイレギュラー事件でのバトルロイドだぞ!鎮圧した方の!」
ただならぬウメの雰囲気に気圧されていたもう一人の男が思い出した様に叫んだ。
ひいっ、と声を上げて目の前の男はウメから手を離し、怯える様に離れた。
「あはは、す、すいませんでした…ただの冗談なんです」
「オーナーさんにはどうか言わないで…お願いします…!」
先程とは打って変わって引きつった顔で媚びた笑いを見せる二人組。その表情には隠しようがない怯えが見えた。
圧倒的な力を持つバトルロイド、そして人間に絶対的に服従しない、殺傷する存在がある事をようやく思い出した。
そのまま二人同じタイミングで背中を見せて走って逃げて行った。
暗い裏路地にウメがただひとり取り残される。
―そいつはオレのバトルロイドだ。おかしなちょっかいはやめてもらおう。
―ナンパなら普通の人間相手にやってくれ。アンドロイド相手なら自由にできると思ってるのか?オレがそいつのオーナーだ、許さないぞ。
―今まで、ああいった連中に劣情の目で見られた事は何度かあったが、その時はマサキが追い払ってくれていた。
そばに人間がいないというだけでこの扱いになるのか、そしてマサキが自分を守ってくれていた、
その事を改めて思い知らされたウメはうつむいたまま路地裏を後にし、あてもなくさまよい歩いた。
1082 :
Ume made by machineD
:2026/02/08(日) 20:42:59 ID:EilABuET
―マサキが隣にいない人間達の世界に疲れ果てたウメは、ベンチに座りうつむいていた。
足が自然にマサキと訪れた思い出のある居住区の公園である。
あの時と違い花も葉も散った裸の木々、そしてマサキもいない。
まるで変わってしまった風景にウメは虚ろな気持ちでいた。
「どーしたのウメねーちゃん、ひとりでうつむいてて」
「マサキさんはどうしたの?」
子供の声に反応して顔を上げると、そこには公園で遊んでいた子供達がひとりでいるウメを気にしてやって来たのだ。
『あ…みんな…』
「ヒマならいつもみたいに遊んでよー」
「ほらさ、ファイナルクエストもうすぐクリアできそうなんだよー、一緒に見る?」
男の子の一人が手にした携帯ゲームの画面を見せびらかしながらウメヘとつぶやいた。
派手なBGMとセリフとともに流れるゲーム画面を見つめるウメ。
『ぐはははは!!勇者よ、この大魔王ザータンには向かうとは愚かな奴らだ!!』
ウメの口からドスの効いたそっくりな声でヴィランのセリフが放たれ、手を振り上げた大げさなアクションを見せる。
「す、すげー!ザータンの声そっくりだ!」
『我が生贄となるがいい!!エビルビーム!!』
「うわーっ、逃げろー!!」
大笑いしながら逃げる子供達、それを声を模倣して手を上げながら追いかけるウメ。
そんな追いかけっこを続けながら子供達とヒーローごっこに興じるウメもまた、いつの間にか笑っていた。
「ウメねーちゃん、また明日ねー!」
『あはは、楽しかったっすよ』
「マサキさんとも仲良くね!」
『う…うん!そうっすね!今度はご主人といっしょに来るっす!』
複雑な気持ちだったが、思わずその言葉に力強く答える事がウメにはできた。
日が暮れて親の待つ家へと帰っていく子供達の後ろ姿を手を振りながら眺めていた。
―やっぱり、子供はいい。
さっきの男達みたいなやつらは嫌だが、明るくて何も考えずに楽しく笑い合える子供達がウメは好きだった。
そんな子供を自分はマサキと一緒にもうける事ができない。
その事にウメは思い悩んでいた。だが、子供は大好きだ。
―そうだ。ご主人の子供なら誰との相手だろうと愛せる。
その子供と一緒に過ごして、育み、見守りながら笑い合って暮らす。成長を見守る。
それができれば十分ではないか。それこそが自分の成すべき事ではないか。
別にいいじゃないか。ご主人の傍にいられる事こそが自分にとって最高の喜びなのだから。
…複雑な気持ちはあるが、ご主人との間に子供を産んでくれるかもしれない存在なのだから、
あのミカという女と仲良くやっていかなくてはいけない。どう接したらいいだろうか。
M10のオーナーが妻帯者だと聞いたし、彼女から色々アドバイスしてもらおうか?
そうウメは悩みながらも、その歩みと心は前向きだった。
そして、子供達と同様に、ウメもまた帰るべき家に、マサキの家に帰ってきた。
二人の男女の声が聞こえる。まだミカは家にいるのだろう。
何と言って帰ろうか、どう話しかければいいだろうか。
頭の中で模索しながら玄関へと近づく。
「―ねえ、マサキ君…あの子を手放す気…ないかしら?」
聴覚センサーに届いたミカのその声に、ウメの体は凍り付いたように硬直した。
「な、何を言うんだ!?あいつを…ウメを…手放すだって!?そんな事を…」
マサキの困惑した声が続け様に響く。
「最後まで聞いて、マサキ君。…貴方はあの子を連れていたら…地球に帰れない」
「…っ!?」
―自分がいたら、ご主人の夢は叶わない?
信じられないその言葉に硬直したウメはそのまま糸の切れた人形のようにがっくりと地に膝をついた。
既に日は落ち、夕暮れが終わり夜の闇が包もうとしていた。
1083 :
Ume made by machineD
:2026/02/08(日) 20:46:47 ID:EilABuET
「ど…どういう事なんだ!?ウメがいたらオレは地球に帰れないって!
借金ならこのまま頑張ればいずれ返済できる!あいつと一緒に任務をこなしていれば!」
「マサキ君、あなたはこの星の開拓がどれくらい進んでいるか知ってるかしら?
この星では各地に支配種とも言うべき危険な原住生物、ヒューマノイドジオアント…エイリアンが跋扈している。
そいつらを駆逐して開拓を進めるには遺跡から発掘されたバトルロイドの力がまだまだ必要なのよ」
「…確かにそうだ…」
自分がウメと出会ってからいくつものエイリアンのコロニーを壊滅させて、安全地帯を確保し開拓地を広げてきた。
エイリアンの駆除に既存の技術力とコストで軍隊を出動させていたら、これだけのペースで開拓は進んでいなかっただろう。
そんなバトルロイドを手放し、無用な地である地球で遊ばせておく理由などないだろう。行政府が許す訳がない。
「…それにもうひとつ。マサキ君は、地球と植民星との関係が良くない事は知ってるかしら?」
「人並には知ってるよ。植民星の開拓が進んでようやく自立が可能になってきたから、
今までの開発の支援を借款として徴収しようとしてるって。
向こうからしたら自立できるまで金出してやってたつもりなんだろうが、
この星の殆どの移民にとってはあっちの、地球の都合で追いやられたようなもんだ。
安全な地球に居座り続けておいて、重税を取り立てようなんて皆納得してない。ふざけるなって感じだ」
「…そうよね。私だってそう思ってるわ。この星での各地を取材して望まずやって来て、厳しい環境で頑張り続けた人達をよく知ってる。
この植民惑星ジオに住んでる移民、そして行政の人間達もほぼすべての人達が同じように考えてる」
ミカは遠い目をしながらつぶやく。彼女もまた、この星で苦労をしながら生きてきた人間の一人なのだろう。
「遺物、その中でもバトルロイドは対立が深まってる地球に対して、植民星が持つ明確なアドバンテージだわ。
そんなテクノロジーが地球の手に渡る危険性を行政府は許さない」
「………」
マサキは思い出していた。イレギュラー事件が終わってからの軍や行政府からの自分、そしてウメに対する対応の変化を。
恐らく彼らにとってウメは大した評価ではなかったのだろう。だからこそ素人同然の自分に預け使い捨てても構わないような適当な扱いをしていた。
だがあの事件で評価が一変したのだ。バトルロイドの中でも有数の戦闘力と有用性を持った存在であると。
管理を厳重にすべし、安易にその情報を漏らすような、他所に無断で持ち出す事を禁じる、として監視の目が厳しくなった。
…となれば、なおさらこの星から手放す訳にはいかない存在だ。
自分はどうでもいいだろうが、ウメは絶対に…。
マサキは今になって理解した。自分の地球に帰りたいという目的と、ウメを所有し続ける事は両立しえない事である事を。
どちらかを捨てなければならない。地球への帰還とウメ。その両者が天秤にかけられている現実が目の前に立ちはだかった。
「―わかったでしょ、あの子と一緒にいたら…あなたは地球には帰れないのよ。
ただし、軍や研究所の中であの子の評価は最高に高くなっている。
だから、オーナーを解除して所有権を譲渡すれば…借金を帳消しにして地球で住む分の対価もきっと手に入る」
「そ、そんな…!オレにあいつを…ウメを売れっていうのか!?」
マサキは声を荒げてミカへと詰め寄った。その勢いにミカは一瞬うろたえたが、直後にマサキの瞳を見やる。
「マサキ君、貴方は何のために今まで危険な調査員として頑張ってきたの?
地球に帰りたいからやってきたんでしょ?何年間もつらい日々に耐えて叶えたかった夢を、諦められるの?
出会ってまだ1年も経ってないようなバトルロイドの為に。あの子は人間じゃないわ、機械なのよ」
ミカの言葉の一つ一つがマサキの胸へと突き刺さった。
「ウメは…ただの機械じゃない…あんな笑ったり泣いたり、怒ったりする様な奴を…そんな風には思えない…」
「それもプログラムでしょ…!生き物ですらないのよ!
出会ってすぐにオーナーに絶対の忠誠を誓う、全てを肯定して好感度が最高になっている、
まるで漫画やゲームの様な都合のいい存在、そんなお人形にベタベタされて、貴方はそれで満足なの!?」
ミカの目には怒りと嫌悪感が灯っていた。その態度に困惑しながらも、マサキは返す言葉がなかった。
普通の人間からすればどこまでいってもアンドロイドは機械でしかないのだ。
そしてもし自分が逆の立場だったら…もしミカに美形で最高の男性型アンドロイドがいたら男として何も思う所はないか、
そう思えば理解はできなくもなかった。何も口を開かない自分に呆れたのか、ミカは残念そうな目をして振り向いた。
「…マサキ君、私も…貴方と再会して本当に懐かしいと思えたわ。一緒にあの地球に戻れたら…って思ってた。
―私、帰るわ。現実を見て、よく考えてみてちょうだい」
待って、とマサキが言うよりも先に、玄関のドアを開けてミカは去っていった。
振り返る事のない後ろ姿にマサキはただ茫然とした。
失った地球での思い出が姿を消してしまう。そんな喪失感に囚われた。
バタン、と静かに閉まるドアの音と、遠ざかっていく靴の音を、静かになった室内でマサキは耳にしていた。
1084 :
Ume made by machineD
:2026/02/08(日) 20:50:33 ID:EilABuET
―どうしたらいいんだ?
自分は地球に帰りたい。その一心でここまで命をかけて、孤独にも耐えてやってきた。
母親を失って、地球を離れて、それから何もいい思い出なんてなかった。
自分の幸せだった思い出の中にいたミカと偶然出会って、ようやく幸せを取り戻せると思った。
もし、彼女と一緒に再び地球で暮らせるなら…やっと自分は幸せになれると思った。
―その代償はウメを手放す事。それを条件として、果たす事ができる。
手放すと言えばまだ聞こえはいいが、結局の所は売り飛ばすのと同義だ。
かつて自分が目の当たりにしたU-M83、ヤミと彼のオーナーであるヒロ・サイモンを思い出した。
オーナーの権限を譲渡し、自分のバトルロイドを金で売って、引退して悠々自適の生活を送ろうとした。
あれだけ尽くしてきくれたバトルロイドから人間の女に乗り換えるような事を恥もせずに吹聴して。
U-M83、ヤミはそれを認められず暴走してイレギュラーになって、
最後には鎮圧されてオーナーから拒絶される絶望を味わいながら機能を停止した。
あの時の表情は未だに目に焼き付いて離れない。できる事ならせめて元オーナーと言葉を交わさせてやりたかった。
―自分は、あのヤミと同じ様な仕打ちを、ウメにさせようというのか?
マサキは煩悶した。
ゆっくりとイスへと腰を下ろし、机に置かれている写真を眺める。
自分の幼少期の、母親と一緒に写った地球での写真。つらい時はいつもこの写真を眺めていた事を思い出す。
帰りたい、あの頃に戻りたい、そんな一心で孤独に耐えていた。
周囲を見渡すと辺りは静まり返り、ただマサキ一人だけがこの部屋にいる。
昔ならごく当たり前だったこの光景が、ひどく昔の事に思えた。
―この家がこんなに広く感じるなんて思わなかった。ウメが来てからはあんなに狭苦しく感じてたのに。
いつも騒がしくて寂しいなんて考えている暇はなかった。写真を眺めていたら、ウメが飛んできて絡んできた。
「…そうか、あいつにはオレが寂しく見えていたんだな」
ご主人!ご主人!と笑ったり怒ったり、泣いたりしていたウメの顔が頭の中を駆け巡った。
机の隅に、テープで修理したヒビだらけの写真立てがある。壊れたのを捨てるんだったら欲しいってウメが言ってきて、
やめろって言ったのにゴミ箱から拾ってきて飾ったものだ。
そこには居住区の公園で撮影した梅の花と一緒に写る笑顔のウメと、その隣に立つマサキの姿が映っていた。
ウメがご主人といっしょの写真、といつもニヤニヤしながらその写真を眺めていたのを思い出す。
―オレは、この笑顔が曇る所に耐えられるのか…?
―幸せになれるのか?あいつを捨てて。自分の悲願の為に、あいつを犠牲にしてそれで満足できるのか?
ピンポーン、という玄関のチャイム音が、マサキの意識を現実に引き戻した。
『マサキ君、ごめんさい、話があるの…いいかしら?』
ミカの声だった。戻ってきてくれたのかと思わずその声に反応し、駆けだして玄関のドアを開けて迎えた。
「ミカ、さっきはすまない…」
そう声を放った途端に、マサキは驚愕した。
目の前にいるのはミカではなく、ウメだった。
暗闇に灯る明かりの下で、ウメはうつむいたまま無言で玄関から中へと入っていった。
「ウ、ウメ…?どうしたんだ?さっきの声は?」
マサキは思い出した。ウメには他者の声を模倣できる機能がある事を。
普通に帰ってくればいいのに、なぜ自分を騙すような行動をした?
そして、なぜうつむいたまま何も言わない?
そのままゆっくりとマサキを押し出す様に部屋の中へと入っていく。
「ウメ、どうしたんだ?なぜ、何も言わない!?」
後ずさるような形で部屋の中央辺りまで来てから、ウメは静かに口を開いた。
『―ご主人、アタシを捨てて、あの女と一緒になるんすか?』
1085 :
Ume made by machineD
:2026/02/08(日) 20:52:25 ID:EilABuET
いつものウメとは全く違う雰囲気で放たれたその言葉がマサキの胸を貫く。
マサキは心臓を槍で一突きされたような感覚と、背筋が凍り付くような寒気を感じた。
そして直後に、確信した。ウメは先程の会話を聞いていたのだと。
マサキは何も言えなかった。雰囲気に気圧されたのか、自分でもその答えが出ていないからなのか。
そのリアクションにウメはうつむいて声を小さく漏らすと、口を開いた。
『―できるわけがないっす』
「―」
『ケッコンして子供が育っていくにはアイが必要だって、ご主人は言ってったっす。
あの女が、ご主人を愛してる訳がないっす』
「いきなり、な…何を言って…」
壁にまで後ずさっていたマサキ。
壁際に据え付けれていたベッドにつまずく形で、尻餅をついた。
上を見上げればウメの姿がある。表情は髪に隠れてよく見えない。
ずっと大きく見える。自分よりも背の高いウメの威圧感を、初めて実感した。
『ご主人を一番アイしてるのは、アタシっす。
ご主人が一番必要で、一番ふさわしいのは、アタシだけっす』
「ウ…メ…」
『ご主人も、アタシのコト、アイしてるっすよね?』
じっと心の奥までも見据える様な視線。
あの時と同じように、はぐらかす事の出来ない空気を感じ取った。
ウメは自分からの本気の返答を求めている。
マサキはただならぬ雰囲気に困惑するも、ぐっ、と拳を握ってウメの瞳を見つめ返した。
「…愛してるさ。お前は…もうオレにとって…かけがえのない家族になってたんだから…」
マサキの言葉を聞くと、ウメは動きを止めた。
そしてその直後、静かに、微笑んだ。
『やっぱり…ご主人は優しいっすね…』
―一瞬、マサキは、そのウメの表情が幼い頃に見た母親の表情と重なる感覚を覚えた。
『…ご主人、アタシとセックスするっす』
「―!?」
マサキはウメの口から放たれたその言葉に耳を疑った。
『ご主人とアタシにアイがあるなら、子供ができるはずっす』
「何を馬鹿な事を言ってる!?アンドロイドのお前にそんな機能がある訳がないだろう!?
それに…オレはお前の事を家族だと、こど」
―言い終えるよりも前に、マサキの全身に電流が走る感覚があった。
身を乗り出して否定しようとした体がベッドへと沈んでいく。
手足が痺れる。立ち上がれない。手足が動かせない。
マサキの視線の先には、残渣の火花を散らすウメの尻尾状のケーブルが動いていた。
ウメはマサキの身体機能を電流で麻痺させたのだ。
『アイがあれば、奇跡は起こるっす。白雪姫も、ピノキオも、アイがあったからハッピーエンドになったんす。
ご主人とアタシはケッコンして子供を産んで育てて、一緒に幸せに暮らすんす』
「ウ…メ…!」
狂ったとしか思えないウメの発言と瞳。
震わせる事しかできない手足を必死に動かし、拒否の姿勢を示した。
そして子供の様に思っていたウメの、情欲に染まった妖艶な顔と魅力的な肢体がマサキの眼前に迫っていた―。
(つづく)
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