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【R-18】Mシチュスレの引用スレ
1 :
名無しさん@狐板
:2020/01/19(日) 00:15:29 ID:bMTYbG3g
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当スレは某R-18スレの長文レス、SS、スレ主以外のAA・支援AAを投稿する場所です
それ以外での使用はお控えください
954 :
砂場のお城と王女様達(前編)
:2025/05/18(日) 22:48:59 ID:WuljWpuy
誤爆してみっともなくレスで内容がバレてしまいますが思いついて書いてしまったので投下します
長くなったのでまずは前編
導入部で見所ないかもですいません
何年ぶりの日本、そして我が家。迎えてくれる者もいない、何年も放置された主人を忘れてしまったであろう家。
埃と淀んだ空気の溜まり場となったであろう惨状を思うと気分が沈む。
陰鬱な気持ちで鍵穴へと鍵を差し込み、回す。
その錠は意外にも軽く解かれ、開かれた扉の先が視界に入る。
―そこにあったのは綺麗に掃除され、整頓されかわいらしい玄関マットや女ものの小物に彩られた玄関だった。
小さな靴も2足、置かれている。
自分は目を疑い家を間違ったのではないかと再び表札へと目を向ける。
…那科孤太郎…なしな、こたろう。確かに自分の名前だ。
間違いなくここは数年間不在にしていた自分の家だ。これは一体どういう事だ?
その瞬間、ドタドタと慌ただしい足音が響き渡る。
振り返ると、小学生高学年くらいの小さな、しかし気の強そうな女の子が怪訝な表情でこちらを見つめている。
「―あなた、誰?ここ私達の家なんだけど!?」
彼女の後ろから不安そうな顔をした、同年代の女の子が不安そうにこちらを覗き見ている。
そう、自分の家は、この小さな不法侵入者に住み着かれていたのだ…。
「それはこっちのセリフだよ。僕はこの家の持ち主。君達こそ誰だい?」
「ハァ!?いきなり来て何言ってんのあんた?ショーコを見せなさいよ!」
全く気後れする事もない目の前の少女に、今までのアメリカ暮らしで使っていた写真付きパスポートを見せる。
「どう?ここの表札の名前と同じだろう?君達こそ誰だい」
目を見開いて驚愕する少女。まさに寝耳に水、というリアクション。悔しそうに唇を噛みしめ自分を睨みつけた。
「あんたが本当の持ち主だからって何よ!今まで何年ここをほったらかしにしてたの!?私達が住んでも文句ないでしょ!」
「お願いです…私達、この家が本当に好きなんです」
「でも、君達がやってる事は紛れもない不法侵入と不法占拠だ。どうしてもここは自分達の家だと言い張るのなら、警察を呼んで話し合いしなくちゃいけなくなる」
警察という単語を聞いて、凍り付く二人の表情。この子達も口は回り賢いようではあるが、現実が分からない訳ではない。
…そして何より、この子達には当然親がいて、こんな生活と振る舞いを知って許しているとは思えない。
絶対に表沙汰になってはいけない痛い所のはずだ。
案の定、あれだけ強気だった目の前の少女はうつむいて震え、もう一人の女の子も真っ青な顔で彼女の手を握っている。
「…どうしてよ、どうして私達の大切なものを奪うのよ…」
泣きそうな顔で力なくつぶやく。
その姿に、デジャブを感じた。自分がかつて、友達と一緒に作った秘密基地の小屋が、持ち主の都合で取り壊されてしまったのを見た時だった。
きっとあの時の自分と同じ気持ちをこの子達も味わっているのだろうと思うと、これ以上邪険にできなくなってしまった。
「―どういう事なんだい?話、聞かせてくれるかな?」
子供の身勝手には毅然とした態度で臨むべきだと思っていた自分の気持ちは、崩れてしまった。
955 :
名無しさん@狐板
:2025/05/18(日) 22:49:24 ID:WuljWpuy
「それで、不動産業者が管理で訪れた時こっそり忍び込んで、中から鍵かけて出入りできるようにして、こっそり合鍵を作った?…大した行動力だなあ」
おとなしそうな女の子がおどおどしながらソファに腰掛ける自分へとコーヒーを出した。
恐らく彼女らが揃えた生活用品なのだろう。自分がアメリカに発ってから数年、すっかり彼女らの「お城」に造り替えられていた事が視界一面にうかがえる。
「つまり、お互いの家に泊めてもらうって親に言って、実際にはこの家で度々お泊りしてたって事か。
君達くらいの女の子が無断外泊なんて、そりゃパパとママが許す訳ないよな」
「…パパなんていないわよ。それにママが気にするのは、私のテストの成績と学校での態度だけだもの」
「…えっ?」
「ママだって度々外泊してるんだから、私がしたって別にいいでしょ?美衣子ちゃん家に泊めてもらうって言った時だって、ちゃんと勉強するのよとか美衣子ちゃんにテストの点で負けてないわよね、って事ばっかりだもん」
「うん…それはちょっとさすがに同情するな…」
「詠香ちゃん…」
美衣子と呼ばれていたもう一人の女の子は気遣うようにつぶやく。
今更ながら最初の子が詠香、そしてもう一人の子が美衣子という名前であり名乗り合ってもいない事に気付いた。
「美衣子ちゃんの方だってひどいものよ。パパはずっと仕事につきっきりで帰ってこないし、美衣子ちゃんに声もかけない。
ママだって家事しかしないそうよ。しょっちゅう出かけてて、美衣子ちゃんが帰った時はいつも一人きり。
詠香の言葉に美衣子は寂しそうに無言で頷いた。
彼女らの言葉を聞いている内に、似た境遇のお互いに対する依存心と自分達の居場所への想い、その複雑な感情がうかがい知れた。
「…だから、ここが本当に大切なのよ!いいでしょ!?あなたも仕事で随分空けてて、いない事も多いんでしょ!?
私達が掃除や洗濯、全部やってあげるわよ!ここの家のものだって何一つ盗んだり壊してたりなんかしてないでしょ!」
「お願いです、本当に大切な場所なんです。どうか居させて下さい」
「どうしてもって言うんなら、家賃だって払うわよ!それでいいでしょ!?」
―自分は深くため息をついた。全く困った事になった。
小学生の女の子が親に無断で自分の家に住み着いている。それを黙認しろなど、問題しかない。
だが、どうしてもこの子達が一緒に楽しく砂場で作り上げたお城を踏み潰すような気にはなれなかった。
いつの間にか自分の唇は、「仕方ないな」と動いていた。
その瞬間の二人の女の子の表情は、この上なく輝いて明るいとびっきりの笑顔だった。
956 :
名無しさん@狐板
:2025/05/18(日) 22:50:14 ID:WuljWpuy
日本に帰っても、会社に微妙に自分の居場所はなかった。単身で若い故に気軽に海外に派遣された。
…そして海の向こうアメリカで開放的なブロンド美女との甘いひと時なんてものもある訳がなく、
無難に仕事をこなし無味乾燥な毎日、日本に帰りたいと願い続けてばかりだった。
そしていざ帰国しても、お前にいつの間に戻って来たんだというリアクションばかり。
結局大して変わりはなかったな、と思いながら自宅の鍵を開ける。
「あっ!お帰りなさい!」
「お仕事お疲れ様でした。お邪魔させてもらってます」
…ただ、劇的に変わったのは我が家に騒がしい同居人が増えた事だ。
時々お泊りの名目でここの家で過ごしているようで、帰宅した頃には彼女らが家にいる事があった。
台所を通りかかると流し台に置いたままの食器がきれいに洗って並べられており、
洗濯カゴの中には干した洗濯物が畳まれていた。
…約束通り家事はちゃんとしているようだ。仕事帰りの疲れた体でこれをやらなくてはいけないのは気が重い。
正直言ってこれはありがたかった。
彼女らには空いた部屋を使ってもらう事にし、お互いのパーソナルスペースとして干渉しないように決められていた。
最初はお互いに顔を合わせないように、騒がしくしないようにと気を使い合っていた。
「ほら、面白いテレビやってるわよ!リビングで一緒に見ましょうよ!」
…が、しばらく一緒に過ごしている内に警戒心も緩んだのか、キッチンやリビングなど共有の場がどんどん増えていった。
テレビの前で詠香の大きな笑い声が響き渡り、美衣子も口を押えて笑い声を漏らしている。
これがきっと彼女らの本来の姿なのだろう。今ではこうして一家団欒の真似事のような光景が繰り広げられている。
「那科さん、ご飯まだなんでしょう?用意しますよ」
美衣子は冷蔵庫に入っていた作り置きの野菜炒めを取り出すと、電子レンジに入れて温めた。
「美衣子ちゃんって料理上手なのよ!今日調理実習ってやつやってたんだけどさあ…」
詠香は学校での出来事を楽しそうに話したり、気に入らなかった事を愚痴ったりする。
くつろぎの時間にそんな事に付き合わされるなんてと思ったが、彼女の発言が自分の子供の頃の体験談そのもののようで思わず苦笑し、妙に共感しながら相槌を打っていた。
こっちが聞き手に回っていると、さらに詠香の言葉は止まらず、美衣子に宥められてしまう。
あの子も本当ならこうやって両親とお喋りをしたいと思っているのだろうかと思うのだった。
「あっ…もうこんな時間じゃない!」
「私達もう寝なきゃ…那科さん、おやすみなさい
」
小学生の就寝は早い。今日はこのまま泊まってそのまま学校に行くらしい。
彼女らが自分達の部屋に戻って就寝するのを見届けると、大きな音をたてないように入浴を済ませる。
さすがに小学生の女の子に下着を洗わせるのは気が引けるなと思っていたが、何の気もせずに洗濯して干しているようだ。
最初は追い出されないためのご機嫌取りかと思ったが、律儀に家事をこなしてこちらにコミニケーションを試みてくる。
住まわせてくれれば自分などに興味はないと思っていたのだが、思いの他彼女らは自分へと興味を示している。
父親がいない母子家庭同然の暮らし故に、思う所があるのだろうか?
砂場で遊ぶ子供達を見守る大人の様な気持ちでいたが、いつの間にかその砂場に引き込まれてしまったような気分だ。
まあいいだろう、子供のおままごとに付き合ってあげるのも心無い大人にならない為の心構えだろう。
明日は日頃のお礼にケーキでも冷蔵庫に入れておいてあげよう。そんな事を考えながら布団の中で瞳を閉じた…。
まあ、エロ本やその類を家に持ち込めないのはちょっと悩みどころではあるが…。
957 :
名無しさん@狐板
:2025/05/18(日) 22:51:03 ID:WuljWpuy
「那科くんじゃないですか!いつの間に帰国してたんですか?」
驚きとともに顔をほころばせたのは、少し年上の先輩の長瀬さんだった。
彼女は入社したての自分を色々と気にかけてくれた親しい先輩だ。
自分が海外に単身赴任になってから、色々と気にしていたようだった。
話が弾むと、退勤後に色々話そうと居酒屋に共に足を運んでいたのだった。
「立派ですよ、那科くんは、まだまだ若くて入社後間もないのに海外で一人で頑張って…」
「いやいやそんな…他に誰もやりたがらなかったからですよ…」
酒が入ると長瀬さんは陽気になって酒を勧め、饒舌になってくる。その顔はほんのりと酔いで赤らんでいた。
「他の男の人なんて調子のいい事言ってばかりでやる気がなくて、困っちゃいますよ!
飲みに誘われるんですけど、酒は好きですが変な下心のある男の人ばっかりで本当に嫌になります!」
どうやら男達との関係で色々悩み事があるらしい。
とはいえ長瀬さんは年とは裏腹に若々しく綺麗な顔とスタイルの良い体で男性社員からは憧れの的…
というのは上品な言い方だろう。自分だってよからぬ期待を抱いてしまうほどには魅力的な女性だ。
「長瀬さん酔うのは程々にして下さいよ…こんな所皆に見られたらイメージ崩れますよ」
「酔ってませんよ!それに那科くんだからこんな事言うんです!」
長瀬さんのような女性に赤ら顔で見つめられると思わず胸が高鳴りそうになってしまう。ハハハと苦笑する自分。
「気の合う相手と一緒に飲むと本当にお酒がおいしいですね…終電逃しちゃいそうになっちゃいます。
那科くんってここらに住んでて、持ち家あるんですよね?」
「え、ええ…」
「じゃあ今度飲みに行く時は、終電逃しても大丈夫ですよね、那科くんの家に泊めてもらえばいいんですから」
「ちょっと、長瀬さんまずいですよ」
「そういう事言える人だから信用できるんです。次の飲みの時が楽しみですね!」
長瀬さんのその言葉がただの酔った勢いの冗談でない事に期待を抱かずにはいられなかった。
―そしてその直後に、自分の家で楽しそうに過ごしている詠香と美衣子の二人の顔が浮かんだのだった…。
「…あのさあ、今度の週末、友達が家に来る事になってるんだ。その日は空けてもらってもいいかな?」
3つの椅子が埋まる食卓のテーブルで、詠香と美衣子はきょとんとする。
「ええ…ちょっと残念ですね」
「友達って誰?まさか女?」
詠香は露骨に不機嫌な顔を浮かべた。
「最近あなたって飲みに誘われたって言って帰りが遅いじゃない、ちゃんとお帰りなさいしようと待ってたのに」
「わがままを言う立場じゃないのはわかってますけど、私も詠香ちゃんも寂しいです」
「いやー勘弁してくれ、社会人には大人の付き合いっていうのがあるんだよ」
美衣子は不機嫌そうに視線をそらし、詠香はフン、と怒ったような声を上げた。
「お、女じゃないさ!それに君達の部屋には入らせないようにするからさ」
気恥ずかしさと女と言ったら何やら不穏な雰囲気を感じ取ったのもあって、思わず嘘をついてしまった。
そうして気まずいままその日は眠りにつき、言葉を交わすことなく先に登校してしまった。
もし、もし自分が長瀬さんと仲良くなって家に訪れる様になり、もし仮に、一緒に暮らしたい、となったのであれば…
彼女ら二人はどうなるのだろうか?このまま家に居させるわけにはいかない。
小学生の女の子が大人の男の家に無断で一緒に暮らしている。この状況こそがそもそもまずいのだ。
いつかはバレる。バレたら自分だけではなく彼女らも大問題だ。その前に終わらせなくてはならない。
…でもこれは仕方がない事だ。子供はいつか砂場遊びから卒業しなくてはいけないのだ。
そして大人もいつまでも子供と同じ遊びに付き合ってあげている訳にもいかない。
自分が大切にしていた秘密基地が取り壊されてしまったのを目の当たりにしたように。
来るべき時が来るだけの事なんだ。そう思いながら、玄関の扉に鍵をかけ、出勤した。
「おはようございます、那科くん」
「おはようございます、長瀬さん。今度の週末楽しみにしてますよ」
にこやかに長瀬さんに挨拶をすると、仕事にかかるのだった。
そう、自分は社会人であり大人なのだから。
―今晩、長瀬さんと居酒屋で食事を済ませて別れた後、まるで自分を貫く様な視線の様なものを自分は感じた。
(つづく)
958 :
名無しさん@狐板
:2025/05/18(日) 23:41:42 ID:xnIUuXCA
おつー
嘘付いたね⋯
959 :
名無しさん@狐板
:2025/05/19(月) 23:48:15 ID:+zSOeuR4
おつ
続きも嬉しみ
960 :
名無しさん@狐板
:2025/05/19(月) 23:49:34 ID:HUr+hbYy
乙
961 :
砂場のお城と王女様達(中編)
:2025/05/21(水) 01:49:05 ID:Anvw6F9e
「な…何ですか、これは…?」
ほろ酔い状態の長瀬さんがつぶやいたその言葉とまるきり同じ事を、自分は思った。
扉を開けた玄関の先には、口紅のついた自分のワイシャツ、強い香水の香り漂う女物の服、
そして派手な柄のブラジャーとパンティーがこれ見よがしに脱ぎ捨ててあった。
目を疑った。そして思い至った。こんな事ができるのは、合鍵を持っているあの子達しかいない、と…。
「信じられません、こんな爛れた生活をしてる女性が那科くんにいたなんて…」
「な、長瀬さん、これは…違うんです!」
「貴方も結局不純な事を考えている男の人達と変わらなかったんですね。…さよなら、那科さん」
軽蔑しきった冷ややかな声でそう告げると、背を向けて玄関から去っていった。
「待って下さい!」
呆然とした後に彼女を追うも、どんどん遠ざかる彼女の背中。一度も振り返る事のなかったその光景に、
ただ終わった、と追いかける気力すら失わせていた。
呆然としながらフラフラと玄関の中へと入っていく。
その視線の先には、激しく自分を睨みつける詠香が仁王立ちしていた。
「嘘つき」
声が震えていた。憎悪のこもった瞳で自分を詠香は睨んでいた。
「女じゃないって言ったじゃない!あいつの為に私達を追い出すような事したの!?」
次々と自分を責め立てる罵声を浴びせる詠香。もう、全てを察した。
詠香達は自分を怪しんで、長瀬さんと会っている姿を見ていたのだ。
そして、彼女をきっかけにいつかこの家から追い出される事を察して…こんな事をしたのだ。
自分達が造り上げた砂場のお城を守る為に。
「…何でだ?いくら何でもこんな事をする必要はなかったじゃないか!
君達にとって大切な家だってのはわかる!でもここは僕の家じゃないか!」
この子達はこの家が自分の好意、気まぐれで住まわせてもらっている事はわかっているはずだ。
思ったよりは大人だと思っていたが、やっぱり好意を忘れたわがままな子供だったという事なのか。
裏切られたような、失望したような気持ちに打ちひしがれる中、思わぬ言葉が彼の耳に届いた。
「僕の家…?」
自分が発したその言葉に、詠香は肩を震わせた。
「違うでしょ!ここは、私達3人の家じゃない!!」
「この…浮気者…!」
怒気と怨嗟と共に放たれたその言葉に自分は言葉を失った。
自分はただのおまけだと思っていた。だが、彼女らの『お城』には既に自分も含まれていたのだ。
自分は、思い違いをしていたのか?
そう衝撃を受け立ち尽くしていると、突然激痛が背後から全身を駆け巡った。
まるで電撃を流されたかのような痺れる感覚。意識を失うその直前に視界をかすめたのは、
スタンガンを手にして息を荒くする美衣子の姿だった…。
962 :
名無しさん@狐板
:2025/05/21(水) 01:50:41 ID:Anvw6F9e
体がまだビリビリする感覚を感じながら、ゆっくりと視界が明るくなっていく。
ベッドの上だった。体を起こそうとするが、動けない。手足に縄が縛られ、ベッドに固定されている。
こんな行為をした人間は彼女らしか考えられない。
そう、ゆっくりと視線を上に向けていくと、目の前には詠香と美衣子が立っていた。
―いったい何を考えているんだ!早くこの縄をほどくんだ!
…そう言いそうになった瞬間に、自分はふと思い至りうつむいた。
「―すまなかった」
あれこれ言い訳するのも、立場をふりかざすのもやめようと思ったのだ。
彼女らの事を軽んじていた。たとえこの共に過ごす生活が社会的に好ましくないいずれ解消すべきものであるとしても、
彼女らとしっかりと話し合ってからにすべきだったのだ。
それを怠った。何より、詠香も美衣子も自分に対し想像以上の感情を抱いていた事に気付けなかったのだから。
「言い返せないよ。君達の事を軽く考えてた」
その負い目が何を言われても仕方がないと、思わせた。
「な…何よ!そんな風に言われたら…言いたかったことも…言いにくくなっちゃうじゃない!」
怒りと困惑の色が混じった声で、詠香は睨みながら声を上げた。
詠香の父は彼女が物心つく前に浮気が原因で離婚していた。
浮気は悪い事だ、悪いのは父の方だ。母にそう言い聞かせられていたが、
父と一緒である思い出が全くなかった彼女にとって、父という存在に対し幻想や憧れも抱いていた。
彼―那科孤太郎という大人の男性と生活の場を共にするという事は、その想いを反映させるのも不自然な事ではなかった。
詠香は彼に対して父の姿を見ていた。浮気して家族を蔑ろにする父親を問い詰める娘のような心境だった。
そして、那科自身も、その事に気付いた。この謝罪は、正しい選択だったと言える。
―そう、詠香に対しては…。
「わかってくれたんですね」
幼い少女とは思えない笑顔を張り付けて、美衣子は静かにつぶやいた。
その視線に宿った瞳の光に、彼は得体の知れない何かを感じた。
思わず後ずさりしそうになるが、拘束された手足はそれを許さなかった。
ゆっくりと歩み寄る美衣子。
963 :
名無しさん@狐板
:2025/05/21(水) 01:51:55 ID:Anvw6F9e
似た者同士ではあるが、美衣子の家庭状況は詠香とは異なる。
父親は仕事にかまけ遠方に単身赴任、それ故の距離から妻や娘と疎遠になり関りもしようとしなくなった。
そんな夫に対し、母は無関心で特に何もしようとはしなかった。非干渉なら幸いと自分の時間にかまけるばかり。
そんな両親を目の当たりにしていた美衣子は、結婚していようと子がいようと、
お互いが関係を維持しようとしなければ夫婦関係も家庭も崩れ去ると、そう認識するようになっていた。
感情的で思った事を正直に言う詠香。それに対し、美衣子は控えめで一歩引いた位置にいて強い自己主張をしない。
―しかし、詠香の行動した後に過激な行動を取るのは常に美衣子だった。
週末に家を空けて欲しいという発言を怪しんで後をつけたのも美衣子であり、
女物の服や下着を用意して長瀬を幻滅させようと発案したのも美衣子であり…
「痛い思いをさせてごめんなさい。でも、こうするしかなかったんです。
きっと、話を聞いてくれないと思ったから…」
詠香の意図とは別に独断で那科を気絶させ拘束したのも…彼女だった。
悪い事をしたという自覚はあれど、仕方のない事だと割り切れている事を那科は感じ取り震えた。
「私からも謝らなくちゃいけない事があります。私―最初、貴方の事は邪魔だとか思ってたりしてたんです。
詠香ちゃんと一緒の場所がなくなっちゃう、大人なんてみんな身勝手で信用できないって思ってました」
「…美衣子ちゃん…?」
「でも貴方と一緒に過ごすようになってから、詠香ちゃんはすごく楽しそうでした。まるで本当の家庭が手に入ったみたいな気持ちでした。初めての信用できる大人で、初めて一緒にいたいって思える男の人だったんです」
見た事もない雰囲気で言葉を続ける親友の姿に困惑する詠香。その口調には懺悔しているようで、どこか恍惚を思わせるようなものが滲み出ていた。
「孤太郎さん」
自分の名前を呟く美衣子の声にゾクリとする那科。
「孤太郎さんは、お嫁さんが欲しかったんですね…?」
幼い女の子とは思えない蠱惑的な表情を浮かべた美衣子は自分の衣服に手をかけた。
はらり、と音もなく衣服は床に落ちた。
(つづく)
964 :
名無しさん@狐板
:2025/05/22(木) 02:55:21 ID:5wxhVl4m
乙!
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